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パリのbanlieue(バンリュー)、 パリの「郊外」からパリを理解する


パリのbanlieue(バンリュー)、 パリの「郊外」からパリを理解する_b0074416_00081451.jpg


映画『アメリ』に登場する水道橋は、パリ、アルクイユが舞台となっている。アルクイユといえば、エリック・サティが過ごしたパリ郊外の街である。

今橋映子は、『<パリ写真>の世紀』(『都市と郊外』比較文化論への通路 所収)の中で、パリという都市の理解を深めるためには、パリの郊外banlieue(バンリュー)を注視することの重要性を指摘している。コルビュジェは、『アテネ憲章』のなかで、「・・・郊外とは場末の退廃した子孫・・・」と位置付けているが、1920~1924年にティエールの城壁が解体された同時代にこの城壁の外部であるbanlieue(バンリュー)すなわち「郊外」を都市とはまったく無関係な場所として認識していた。あのベンヤミンでさえ、こうした郊外を意識することはなかったと今橋は指摘している。

それに反して、写真家であるロベール・ドアノーは、詩人のサンドラールとの共作、『パリ郊外』を1949年に出版する。すでに、アジェによっても『ゾーンの人々』や『パリの城壁』と題されたアルバムがつくられ、パリ郊外は撮影されていたが、ドアノーは、アジェの写真の意義を理解しながら、彼の意志を継ぐような仕事をしたのである。

パリという都市の神話は、19世紀中期、オスマンのパリ大改造により成立したものだが、その一方、中心から周辺へとはじき出されたのは、ロマ(ジプシー)、貧民、屑屋、犯罪者たちであり、無法地帯となっていたのがbanlieue(バンリュー)であった。ティエールの城壁空堀から200メートル以内の空地は特に「Zone」(ゾーン)と呼ばれ、建設が禁止された区域であった。こうした土地に「はじき出された人々」がバラックを建て、集まったのである。ドアノーはこうした地域で幼年時代を過ごしたこともあり、彼にとって、パリの華やかな建設と対照的なパリ郊外の有り様を無視することはできなかったに違いない。

ドアノーはあの有名な写真「市庁舎前のキス」(1950)を撮影した写真家である。わたしは彼がどうしてこの写真を撮影したか知らないが、その前年に出版された『パリ郊外』を知ると、この写真がアイロニカルに見えてくる。

「郊外」という概念がここ30年近く、建築学、都市論の中でさかんに議論されてきた。すでに古びた言い方のように聞こえるが、現在、わたしが東京の「郊外」に過ごしていることもあり、こうした「非ー場所」としての都市をもう少しクリアに理解するためにも、再度、今橋氏のような論考に目を通すことの必要性を感じている。(以上、今橋氏の論考より)


by kurarc | 2020-02-02 00:00 | books(書物・本・メディア)
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