新たな『デカメロン』が生まれるのか

新たな『デカメロン』が生まれるのか_b0074416_21190628.jpg


イタリアで新型コロナウィルスが蔓延しているという。日本ではカミュの『ペスト』がよく売れているというが、イタリアではもしかしたら『デカメロン』が読まれているのかもしれない。

手元には『デカメロン 上』(河島英昭訳)が買ってあったが、まだ読んではいなかった。こうしたおりに、この物語を生み出す背景を述べた第1日の序を読んでみたが、古典とは恐ろしいものである。現在の日本の状況を14世紀にすでに書き留められているかのようなのである。

『デカメロン』は「14世紀のイタリアのフィレンツエでペストが猛威をふるった時、7人の淑女と3人の紳士が森の館に避難し、毎日交代で面白い物語を話して聞かせる」(上記、訳本の後付けより)という設定の文学である。『デカメロン』では、ペストという災いは、神が死すべき人間に正義の裁きを与えたのか、といった宗教的記述もあるが、むしろ、当時の混乱を冷静に分析し、都市の現状や人間の本性を具体的に記述している箇所も多く、来るべきルネッサンス人の感性を余すところなく表現している。

河島氏の訳も非常に優れており、訳文が読みやすいだけに、『デカメロン』の物語がよりリアルに感じられる。古典とは、このような文学を言うのだろう。

by kurarc | 2020-03-08 21:18 | books(書物・本)