金沢 古典研究 空想旅行

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『金沢の町家』(島村昇著)という名著がある。京都の町家と比較しながら、町家の歴史、類型などについて分析した著書である。久しぶりに本棚の上に積んであったこの著書を開くと、40年ほど前に金沢を訪れた時のメモが挟まれていた。わたしはすっかり忘れていたが、金沢の建築地図の裏に、予備校時代同期生で金沢出身のD君が金沢の街路や喫茶店、土産屋など様々な情報を書き込んでくれたものであった。昨年、金沢を訪れたが、このメモをもって行けばよかったと後悔した。しかし、多分、このメモに記された喫茶店のほとんどはすでに存在しなかったかもしれない。

明治以前の日本建築を学習するとき、普通は京都や奈良などがまず頭に浮かぶが、わたしは現在、金沢に注目している。それは、街のスケールが大きすぎず、町家の保存状態もよく、さらに、新しい建築も見るべきものが多いことによる。新幹線で東京から行きやすくなったこともある。建築だけでなく、都市という視点からも金沢は興味深い。日本建築、都市の古典研究の場所として条件がそろっているのである。

先日、吉田健一の著書を紹介したが、その吉田も『金沢』という小説を書いているが、彼も金沢の魅力にとりつかれたものの一人である。『金沢』を最近読み始めたが、『英国の文学』の論文調の著作とまったく文体が異なり、かなり癖があるが、都市論のような小説でもあり、読了するのを楽しみにしている。

東京は緊急事態宣言で、外出を制限しなくてはならない。せめて本でも読みながら頭の中で空想旅行をするしかない。この「休暇」のような時間に金沢や沖縄など様々な場所に書物で訪ねることにしたいと思っている。それは、本当の旅の準備のためでもある。




by kurarc | 2020-04-09 23:07 | 金沢-Kanazawa