水木しげる作 『水木しげるの泉鏡花伝』

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わたしが最も影響を受けた漫画家をあげるとしたら、水木しげるさんかもしれない。『悪魔くん』や『ゲゲゲの鬼太郎』など、子供の頃、実写やアニメーションで欠かさず観ていた。彼の描く妖怪たちは人間味のあるものばかりであること、そのキャラクターが非常に個性的であることが子供ながら夢中にさせた要因だと思う。

その水木さんが90歳を超えて最晩年に出版した作品の一つが、『水木しげるの泉鏡花伝』である。二人とも妖怪とは切っても切れない作家であるため、漫画として楽しむにはうってつけの作者である。泉鏡花の評伝であり、また、『黒猫』と『高野聖』が簡潔な漫画として描かれている。

久しぶりに漫画を手にしたが、おもしろくて一気に読んでしまった。この漫画で知ったのだが、鏡花が逗子で4年間あまり生活していたことは知らなかった。『草迷宮』も逗子時代に生まれた作品のようである。逗子での4年間は、「蝶か夢か、ほとんど恍惚の間にあり」と表現しているという。日露戦争後、文学は自然主義に偏り、鏡花の評価は落ちていく一方で、食べることに苦しかった時期のようである。

この漫画の中でも描かれているが、鏡花が弟子入りした尾崎紅葉宅における修行が厳しかったようだが、鏡花は素直にそれに耐えた。そのことが、後日、彼の文体を研ぎ澄ませる結果につながったのだと思う。

今度、逗子時代の鏡花の軌跡を訪ねる旅を企画したくなった。

by kurarc | 2020-05-02 16:42 | books(書物・本)