鳴り砂考

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晴れた日に砂浜を歩くと、クッ、クッ、と音のする砂浜がある。三陸海岸には九九鳴浜や九と九を加えて十八(ぐぐ)鳴浜があるという。このような砂を「鳴り砂」と呼ぶが、こうした浜は、北陸や山陰地方では琴ケ浜、琴引浜などの名前をつけられていることが多い。

『粉の秘密・砂の謎』(三輪茂雄著)には、こうした粉や砂、いわゆる粉体と物理学で呼ばれるエピソードを集めた物理学書であり文化人類学、民俗学書のような書物である。

三輪氏は、「九九」という音から、九十九里浜もこの鳴り砂だったのでは、という推測をたて、調査に行ったのだという。しかし、砂は鳴らなかったが、その砂を研究室に持ち帰り、調べてみると、黒い砂が大量に含まれ、土砂による汚れもひどく、鳴り砂の条件から外れていることがわかった。

しかし、よくよく調べると、砂の主成分であった石英粒は鳴り砂の特性をもっていることがわかった。採取してきた砂を洗浄したところ、見事に鳴いた、という。これは、江戸初期に行われた利根川改修により、もともと東京湾に流れていた川砂がこちらに流れ込んでいたことが原因であったのである。

上のようなエピソードをはじめ、砂や粉にまつわる興味深い話が本書には数多く含まれている。実は、我々のまわりは少し考えてみればわかるが、粉や砂だらけなのだ。抹茶、コーヒーの粉、小麦粉や砂糖などを想像すればすぐわかることである。抹茶も江戸後期に臼でひかれた抹茶が製品として出回る前は、てん茶という茶葉を石臼で飲む前にひいていたのだという。つまり、日本人は「インスタント抹茶」を江戸時代から飲むようになっていたと言えると三輪氏は述べている。

砂丘がつくる模様(バルハン)に興味をもったことから、粉体力学(粉体工学)という学問があることを知ったが、特に砂は文学の題材にもなり、建築資材にかかせない物質でもある。一粒の砂の中に宇宙を感じることができる、そこが粉体という物質、物理対象の興味深いところかもしれない。

by kurarc | 2020-05-20 19:29 | nature(自然)