映画『ビブリア古書堂の事件手帖』

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原作や漫画ではかなりヒットしたものらしいが、残念ながら映画の出来は今ひとつだった。映画では、太宰の『晩年』と夏目漱石の『それから』を主題にしている。古本とミステリーを重ね合わせたテーマは興味深いが、なにか歯車が噛み合っていないような感覚である。

まずはロケ地である。中心は鎌倉であるが、鎌倉で収まらずに様々な場所をコラージュして制作されている。こういう場合、できれば一都市のなかで完結させたいところだろうが、舞台が鎌倉だけでは足りなかったのだろう。鎌倉の風景を知っているものには、やはり違和感がぬぐえない。

過去と現在を交錯させた描き方も少し稚拙で、舞台の古書店はセットであると思われるが、古書店や看板のデザインなどにリアリティ、説得力がない。ヨーロッパあたりであれば、実際の古書店が舞台として使えるのだろうが、日本では舞台として使用できるような優雅な古書店は限られている。

いろいろ不満は残ったが、かといって観ることのできない映画というわけではない。主人公の黒木華さんの演技がよいこと、野村周平さんの演技の素直さもよい。

昭和の文芸ものの情景を描くような映画はもはや撮影舞台が難しいだろう。日本から昭和が急速に消滅しつつあるからである。昭和の人間としては悲しいが、最近、昭和が懐かしいというより恋しい想いが強い。いろいろ問題の多い時代ではあったが、まだ舗装道路もあまりなく、雨が降ると、砂利道に水たまりができる。そのような道が最近よく思い出される。

この映画では、最後にサザンオールスターズの『北鎌倉の思い出』という曲が流れるが、原由子のボーカルが新鮮でよかった。

by kurarc | 2020-05-29 22:01 | cinema(映画)