映画『シェイクスピアの庭』

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コロナの影響でずっとお預けをくっていた映画をやっと観ることができた。映画『シェイクスピアの庭』(原題"ALL IS TRUE")は、シェイクスピアが断筆し、故郷のストラットフォード・アポン・エイヴォンに帰ってからその死までを綴った映画である。

映画としての出来は完璧といってよく、遠景から近景にいたるカメラアングル、シナリオから音楽に至るまですべてが調和している映画であった。この映画では特に、11歳で亡くなったシェイクスピアの息子ハムネットの死の謎についてがシナリオにおいて重要な要素になっている。日本語のタイトルである『シェイクスピアの庭』に含まれる「庭」への描写は意外と希薄であったので、このタイトルが適切であったのかどうかは疑わしい。

この映画では『ソネット集』でシェイクスピアが美青年のモデルとして詠ったサウサンプトン伯爵も登場する。さすがに、ダーク・レディー(黒い女)は登場しなかったが、そのサウサンプトン伯爵との会話はこの映画のちょうど中間において緊張感を醸し出していた。

衝撃的なのは、息子ハムネットの死因である。この映画では思いがけない要因として描かれている。この要因が事実かどうかはわからないが、もし、これが事実だとしたらシェイクスピアは相当ショックであったに違いない。主演で監督も務めたケネス・ブラナーは、シェイクスピアの研究者といってもよい人だけに、もしかしたら真実に近いのかもしれない。

原題の”ALL IS TRUE”とは、『ヘンリー八世』の発表当時のタイトルであるという。手短に言えば、真実はひとつではない、という意味であり、それぞれ個々に真実はあり、否定しようもないということを意味するようだ。この映画では、シェイクスピアと家族、そしてシェイクスピアを取り巻くすべての真実の衝突を描いた映画と言ってよいだろう。

by kurarc | 2020-06-14 15:01 | cinema(映画)