『ペスト大流行 ーヨーロッパ中世の崩壊ー』村上陽一郎著

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村上陽一郎著、『ペスト大流行 ーヨーロッパ中世の崩壊ー』はなかなか入手が困難な新書であったが、コロナが少し落ち着いてきたせいもあり、書店に積み上げられはじめた。以前から、読みたいと思っていたので、一気に読んでしまう。

現在のコロナウイルスとペストは異なる疫病ではあるが、疫病が流行したのち、人はどのような行動をとるのか、あるいは新しい生活様式への移行や社会体制の崩壊など共通することが多いことがこの著書を通じてよくわかった。

今回、パンデミック(pandemic)という言葉がしばしば報道されたが、これはすでにペストが流行した6世紀にもパンデミックと呼べるような疫病の広がり方をしていたということである。パンデミックという言葉は、エピデミック(epidemic)という言葉から派生したと考えられているということで、デモクラシーの語源である「デモスdemos=民衆の意」(ギリシア語)に基づいていて、「人々のあいだに広く行き渡る」という意味とのことである。

ペストが流行した時代、そもそも病が感染するという概念がなかった、希薄であったということもあり、病に様々な非科学的解釈が行われたという。病因を平衡状態の崩れ、すなわち栄養のせいだと判断したり、大気の腐敗、天文学(占星術)的な原因、気象異変などに求めたという。興味深いのは、占星術をキリスト教は中世の時代から非科学的なものとして排斥し続けていたという事実である。しかし、排斥しようとする裏には、民間のなかで根強く占星術がはびこっていたということの証しであったということらしい。

そして、ポストペストの時代、それは中世の崩壊と来るべき資本主義へ続いていくような社会体制の変革が行われたということである。封建制が崩れ、領主は土地を農民に貸す、あるいは譲り渡すような動き、賃金労働者の発生、相続者を失った貴族たちは、その財産が庶民の手に渡るといった動きのなかから、封建的身分制度も解体されていくことになる。

以上のようなペスト時代の変化は、現在、労働環境をオフィスでの集中労働から、テレワークへ変化させようとするような動きとどこか通じるものがあるが、わたしは日本において、巨大噴火というリスクがある以上、テレワークもまた多くのリスクを抱えこむと思っている。やはり、求めるべきはバランスであり、多方向性である。一つの道が塞がれても、別のいくつかの道から打開できる余裕、備えが必要であろう。

by kurarc | 2020-06-17 20:59 | books(書物・本)