雲をつかむ 『雨の科学』(武田喬男著)

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8月も間近だというのに、梅雨が開けない。普通は7月20日前後に梅雨は明け、空は快晴の時期のはずだ。高校や大学生の頃は、いつもこの時期には夏山に出かけていたのだが。

特に今年は豪雨に見舞われている。一体、雨とはなにか?一般人はこのことをきちんと説明できるものはいないのではないか。さらに、雲とはなにか・・・

『雨の科学』(原本は『雨の科学 雲をつかむ話』と題された)は、一般人にそうした疑問を解消できるように平易に説明してくれる本である。たとえば、雨粒の大きさはどのくらいか?これは、半径が0.1ミリから3ミリなのだという。そして、不思議なことに雨粒は半径3ミリ以上になることはほとんどなく、それより大きくなると、分裂してしまうのだそうだ。また、雨粒の落下速度は、もっとも大きい半径3ミリの雨粒で秒速9m程度。よって、肉眼でその大きさ、かたちを確認することは不可能となる。

それでは、雨粒はどのようなかたちをしているのか?よく漫画の中に描かれるように、らっきょうのようなかたちではない。饅頭のようにつぶれたかたちであるという。雨粒が落下すると、重力と上向きに空気の抵抗力が働くために、饅頭のように変形しまうということである。

今年の豪雨の説明のなかで、”線状降水帯”という用語がよく報道されたが、これは、積乱雲の仕業なのだが、どうも積乱雲はその周辺に積乱雲を発生させやすいメカニズムをもつものらしい。積乱雲の周辺で積乱雲が複製されてしまうということである。

雨という最も日常的に経験する自然現象について、そこから多くの科学的知見を得ることができる。それでは、雲はどうか・・・とその謎に対する興味は広がっていく。未来のいつか、気象をコントロールできる日が来るのかもしれない。そのとき、豪雨という現象はなくなっているのかもしれないが、そう簡単にできることではなさそうだ。

著者の武田氏は、東京大学理学部物理学科の出身である。遡ると、寺田寅彦、中谷宇吉郎の後輩といえるような科学者である。本書を著していた頃、武田氏は白血病を患い、その病床において原稿を用意したという。身近の自然現象を誰にでもわかりやすいく解説した本書は武田氏の最期の著作となった。

by kurarc | 2020-07-27 19:18 | nature(自然)