映画『エル・スール』からグラナドス、そして未来のエストレリャたち

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シネフィルとまではいかないにしても、映画を観ることが習慣になってから数十年にもなる。何百という映画を観ても、忘れさられる映画が数多いなかで、いくつかの映画については、再びその映画を観たいという郷愁に近い感情に襲われる。

その中でも、映画『エル・スール』はわたしが観た映画のなかで、まず第一に再見したくなる映画である。それは、まずわたしが中学生の頃からギター曲を通じて興味を持ち始めたスペインを舞台としていること、さらに、その後知ったスペイン戦争が背景にあることが大きいが、なにより、この映画そのものの表現力による。

たとえば、映画ではグラナドスの曲を使用しているが、スペイン舞曲集の中の、「アンダルシア」はよく知っていたが、「オリエンタル」が何気なく使用されていることを最近気がついた。映画のなかの曲一つにしても、この映画の印象を左右する要素であり、そうした細部に気づかされるたび、再び映画を鑑賞したくなるのである。

最近知ったことだが、この映画のなかでエストレリャを演じた二人の娘たち、ソンソレス・アラングレーン(幼少期)、イシアル・ボジャイン(少女期)は、映画の製作者や映画監督に成長し、スペインで活躍しているとのことである。これは現実のことだが、この事実は、映画のラストシーンと連続しているようで興味深い。

映画のなかで、エストレリャの父アグスティンは、自死を選ぶが、その後の希望を娘に託すように死んでいく。その娘を演じた彼女たちは、その映画の続きを見事に演じているようで不思議だ。映画監督のビクトル・エリセもまさか彼女たちが自らと同じ土俵に帰還してくることなど映画製作当時は予想もしていなかったことに違いない。

彼女たちが映画や映像の世界を仕事に選んだのも、映画『エル・スール』の経験が彼女たちにとっていかに重要な出来事であったかを物語っている。やはり、この映画はある奇跡をつくったといってもよい映画である。

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by kurarc | 2020-08-23 13:52 | cinema(映画)