三国の船箪笥

最近、日本海地域に興味をもっている。10年ほど前、新潟の新発田であるシンポジウムの司会を行うことになり、1年間ほど新発田に通ったことがある。太平洋側では感じられないような街の雰囲気が残っていて、魅力を感じたのがはじまりだった。

その後、瞽女の文化に興味をもち、真冬に新潟、高田の街に瞽女唄を聴きにいくこともあった。また、高田は、雁木の街並みが有名であり、建築や都市にも見るべきものが多い。

ちょうど同じ頃、富山(高岡)に残る金属技術の視察に訪れた。また、ついでに金沢まで足をのばし、町家や現代建築などを見学した。新潟市歴史博物館で木造和船の展示を見たことから、北前舟の寄港地(港)にも興味をもつようになった。

『北前舟 寄港地と交易の物語』(加藤貞仁著)をながめていると、北前舟に積み込んだ船箪笥のコラム記事に目がとまった。骨董屋などでよく見かける船箪笥は、その構造までしげしげと調べたことはなかったが、緻密につくられた箪笥であることがわかった。

特に福井の三国はその産地として有名で、その他、酒田、佐渡が三大産地であったという。興味深いのは、箪笥の前面の装飾金具は、装飾だけでなく、立派な機能をもっていたということである。その一つは、もちろん強度を高めるという機能であり、あとの一つは、万が一、船が沈んだ場合、その金具が重いため、金具の面が下になり、空気は奥(裏側)からもれないため、浮き上がるようにできていたということである。

内部は桐でつくられ、桐が水に濡れると膨張し、隙間をふさぎ、箪笥内部の重要な帳簿、物品などを守ったということである。装飾と思われていたものが、実は非常に機能性、実用性を兼ねていたということに驚きを隠せない。

by kurarc | 2020-08-24 17:59 | design(デザイン)