武士道と鮎釣り
この著書の第14章では、加賀竿、加賀毛針についての内容であり、その商品を扱う目細八郎兵衛商店の紹介を行なっている。加賀毛針は、縫い物に使う針を、藩士が先を曲げて釣り針をしたのがその源であるという。その釣り針には「返し」というトゲがついていない。その針で釣りをすることは、集中力を要することになる。加賀藩藩士たちは、その釣りで集中力、さらに反射力を鍛えたというのである。鮎釣りについても同様で、釣り針だけでなく、釣竿についても凝ったものを考えたという。つまり、釣りをすることは武士道を学ぶ術でもあったのである。
また、鮎を釣るために釣り針に様々な工夫をこらすようになり、その中で誕生したのが加賀毛針であった。針の先にクジャク、キジ、その他野鳥の羽を巻きつけ、虫に似せた釣り針が考案された。その毛針が美しいことから、ある女性からブローチにしたいという注文があり、現在、アクセサリーとしての商品も開発されている。
釣りと武士道が結びついていたという金沢らしいエピソードを紹介している村松の文章のセンスはなかなかのものだと思った。
by kurarc | 2020-08-26 17:57 | 北陸-Hokuriku