二つの「ダイヤモンド」

小説『ダイヤモンド広場』読了。

ガルシア・マルケスが「スペイン内戦後に出版されたもっとも美しい小説」と絶賛したことは嘘ではなかった。一つ一つの描写の輝き、それは、具体的な事物の繊細な描写からもたらされているが、この小説が、作者マルセー・ルドゥレダが祖国スペイン・カタルーニャで著したのではなく、ジュネーヴにて著されたということに驚きを隠せない。

なぜ、これほど些細な描写まで執拗に描ききれるのか?ルドゥレダはスペイン滞在中から、事物に対して執拗に凝視するような習慣をもっていたのかもしれない。そして、この小説は、内戦終結後、20年近く後に著されているのにも驚かされる。彼女の中で、その20年の内に、内戦の経験が熟成し、花開いたような小説かもしれない。

当初は、「クルメタ」(スペイン語で小鳩ちゃんといった意味)という表題で発表されたというこの小説が、なぜ『ダイヤモンド広場』という名称に変更されたのか、その経緯について、カタルーニャ語から翻訳した田澤耕氏はあとがきでふれていないが、これはわたしの勝手な想像だが、ワイダ監督の映画『灰とダイヤモンド』が1958年に公開されていることとなにか接点があるのではないか、と想像してみた。

映画『灰とダイヤモンド』では、シュチューカというポーランド労働者党の幹部が、マチェク(ロンドン亡命政府系ゲリラ)に暗殺されるシーンがハイライトになるが、そのシュチューカは若い頃、スペイン内戦に参加しているとして描かれている。原作の小説は映画とかなり異なるようだが、ルドゥレダがこの映画を観たことは十分予想できる。ダイヤモンド広場は、小説の冒頭と後半に登場するだけで、この小説の中で大きな舞台であるとは言えない。もしかしたら、小説の表題は、ワイダの映画の影響があるのかもしれない。

映画『灰とダイヤモンド』に関しては、You tube上で町山智浩氏による詳細な解説がある。こちらを聴くと、この映画がいかに緻密に計算された映画であるのかが理解できる。

この二つの小説と映画はどちらもその名の通り「ダイヤモンド」のように今でも輝き続けている。



by kurarc | 2020-09-10 17:04 | Spain(スペイン)