ノートル・ダム大聖堂再建

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ノートル・ダム大聖堂火災からすでに1年以上が経過した。およそ2ヶ月ほど前にマクロン大統領から正式な再建方針(特に尖塔部分が重要)が発表された。2019年4月16日、このブログでその後どのように再建されるのか、わたしなりに仮説をたてた。

1:コンペ案
2:再建案
3:ヴィオレ・ル・デュク以前への再建(オリジナルへもどす)

以上の3つを予想した。そして、結果として2の再建案が正式に決定した。西洋建築史の世界では常識になっているが、尖塔のデザインは19世紀、ヴィオレ・ル・デュクという建築修復家(建築理論家)によりデザインされたもので、オリジナルではない。よって、わたしはもしかしたら、ヴィオレ・ル・デュク以前のデザインに再建(復原)される可能性も予想したのであるが、きっと、それ以前のデザインについて十分な資料がないこと、また、すでに建設から150年以上が経過し、フランス国民にすっかり認知されたデザインであること等を考慮した結果、再建案に落ち着いた、ということだと思う。

一方で、メディアの中で気になる用語の使い方が散見された。それは、今回の再建を「復元」という漢字をあてていることである。建築学ではこうした使い方は行わない。「復元」とは縄文の遺跡からその上家を予想して建設するような場合に使用される。かといって、「復原」も今回は使用できない。「復原」が使用できるのは、上の3の場合だからである。

よって、わたしは今回の場合、「再建」(あるいは「再築」)がもっとも適切な用語のような気がする。火災前の状態に「再建」するということ。建築保存学者からすると議論が十分果たされた結果とはいえなかったはずである。パリのオリンピックのスケジュールに再建を間に合わせるなど、政治的配慮が優先されたということだろう。

*図版は、HP notredamdeparis.fr より借用。


by kurarc | 2020-09-17 08:56 | France(フランス)