Googleマップでリスボン サン・ロケ教会へ

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コロナ禍において、当面、海外旅行に行くことはできそうもない。最近は、そうした欲求不満を Googleマップを眺めることで癒している。

Googleマップでよく訪れるのは、2年間住んだ経験のあるリスボンの街である。滞在中歩いた街路を辿ってみたり、行きつけのレストランを探したりする。その中には、すでに閉店しているところもあり、がっかりすることが多い。

リスボンは街路が複雑で、高低差も激しく、歩いていて退屈することがない。Googleマップでは、外部からだけでなく、主な美術館や教会は内部まで見学できるようになっている。

その中で、リスボンにおいて重要な位置を占めるサン・ロケ教会(上写真 身廊 Googleマップより)を訪れてみよう。この教会がポルトガル建築史上重要なのは、ポルトガル・マニエリズム期の一つのタイプを表していることによる。ポルトガル語で、「イグレージャ・サラオ(Igreja salao)」(正確にはsalao後半のaにティルがつく)と言い、日本語に訳すと、「広間式教会」といった訳語になる。

教会の入口を入ると、前室もなく、いきなり大きな広間(サロン)のような身廊(nave)が現れる。このタイプの教会は、18世紀までイエズス会の教会を中心として各地に建設された。また、時代もスペイン支配がはじまる1580年以前に建設されたものであることも重要である。装飾には、フランドル地方の唐草文様(Flemish Rolwerk)などが使用されたことにも特徴がある。こうしたプランは、説教を重視する方針から形成されたのでは、と考えられている。

以上のようなことは、大学で学ぶ西洋建築史では、一切言及されることはない。西洋建築史は、古代ギリシャ、ローマからはじまり、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスを中心に進められるだけで、それ以外のことを知りたいものは、原書にあたるしかない。(もちろん、イタリア他の国々で扱われる建築、建築家も限られているから、興味のある領域は原書を読むしかない)

サン・ロケ教会は、あの天正遣欧使節団が宿舎として利用した教会でもある。日本人にって重要な教会であるといってよく、リスボンへ訪れたときには、必ず訪れるべき教会と言える。

*Wikipediaには「サン・ロッケ教会」と記述されているが、これは間違いだろう。ポルトガル語の発音を日本語に移し替えるのは難しいが、「サン・ロケ」、あるいは正確には「サァォン・ロク(ケ)」の方が近いと思うが、後者の表記(鼻母音の表記)は日本語ではしないから、「サン・ロケ」くらいに簡略化して表記せざるを得ない。

*教会建築に詳しい方であれば、イグレージャ・サラオ(Igreja salao)とは、Hall Churchと呼べるのでは、と思われるかもしれない。ジョージ・クブラーによれば、この二つは区別しているようである。しかし、Wikipedia上では、イグレージャ・サラオ(Igreja salao)はHall Churchとしている。リスボンでは、ジェロニモス修道院礼拝堂がHall Churchの代表事例。

by kurarc | 2020-10-15 09:26 | Portugal(ポルトガル)