「弱い技術」の方へ

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もう随分と昔になるが、2007年7月31日のブログで、歴史工学者、中谷礼仁さんの著書『セヴェラルネス 事物連鎖と人間(改定版では、セヴェラルネスplus 事物連鎖と都市・建築・人間に変更)』を取り上げ、その中で「強い技術」と「弱い技術」というキーワードについてふれた。

中谷さんの著作では、「強い技術」とは巷にあふれている建築や、たとえば、メタボリズムの中で展開された建築である。一方、「弱い技術」とは、たとえば、古代ローマのレンガの技術である。日本の木造建築もその中に含まれると考えてよいと思う。

プロダクトデザインのスケッチをしながら、わたしはいつの間にか、この「弱い技術」の実現についてスケッチしていることに気がついた。スケッチする前に特に意識していたわけではないが、先月デザインした文具、そして、現在スケッチしているものもそうだが、通常、かなり強度のある物質でデザインされるものを、その常識では考えられないような素材、強度の捉え方で勝手に手がデザインしていたのである。

私の中で、「弱い技術」という概念に対し、かなり強い影響を受けていたことが、10年以上過ぎた現在、初めて身体に現れてきたようなのである。この「弱い技術」により何が可能かを考えることが、今後のテーマの一つとなりそうな予感がしている。

by kurarc | 2020-10-18 05:42 | design(デザイン)