建築家 阿部勤の自邸と映画『蝶の眠り』

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映画『蝶の眠り』(上、映画HPより引用)で、建築家阿部勤さんの自邸「私の家」が撮影舞台として使用されていることを知り、この映画を鑑賞した。

阿部さんの自邸は、建築家がつくった住宅(自邸)の中で最も興味深い仕事の一つと常々感んじている。中心にコンクリートのシリンダーをつくり、2階ではそのコンクリートの塔を覆うように木造の屋根をかけた住宅で、そのプラン、スケール感、敷地と樹木、植物との関係、内部と外部との関係など、我々が住宅を設計する場合、考えなければならないすべて条件の解を示しているような素晴らしい住宅である。

映画では、雑誌等でよく理解できなかった詳細が把握できたことは意義深かった。若手の建築家が発表する住宅のように、すべてを薄く、軽く見せようとするようなディテールはこの住宅にはまったく存在しない。枠廻りの贅沢な収め方や目地のとり方、大胆な面取りなど映画から多くのディテールを垣間見ることができた。雑誌ではあまりお目にかかれない浴室のタイルの貼り方もわかり、この住宅に興味をもつもは必見の映画と言える。(かといって、贅沢な部材の使い方はしていない。矩形図を見た感じでは、床の仕様など、最小限の部材で収められている。)

映画自体も悪くはない。アルツハイマーに侵された女流作家を中山美穂さんが丁寧に演じているが、映画のシナリオのせいか、間延びした印象があり、映画の完成度が高いとは言えない。監督のチョン・ジェウンさんの映画は初めて観たが、建築ドキュメント『語る建築家』(日本未公開)という映画をつくっているようで、建築にかなり興味をもたれている監督のようである。そうでなければ、阿部さんの自邸を撮影舞台に設定することなどなかっただろう。

それにしても、撮影中、阿部さんはどうしていたのだろうか。ほとんど、住宅内のインテリアを撮影用にいじられていたが、その間、ホテルにでも住まわれていたのだろうか。よくここまで自邸を映画のために解放したと思う。中山美穂さんが浴槽に浸かるシーンまで許しているのだから。

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by kurarc | 2021-01-11 16:09 | cinema(映画)