『郊外はこれからどうなる? 東京住宅地開発秘話』読了

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三浦展著『郊外はこれからどうなる? 東京住宅地開発秘話』を読了した。拾い読みをしてあったが、すべて読み通した。「郊外論」と言えば三浦氏といってもよいほど、何冊もの著書を出版している。この新書版は、そのなかでも郊外論の概要をつかむのによいし、巻末にブックガイドが記載されていて、親切な編集になっている。

三浦氏の郊外という主題に対する執着には並々ならぬものがあり、都市計画家が著した都市計画に関する著書より、興味深い内容であり、かなり専門的な内容にもふれられ、建築や都市計画を専門とするものにも役に立つ内容となっている。

特に興味深かったのは、第4章「郊外の文化論」、第5章「郊外の歴史と問題」の章で、たとえば、東京の田園調布のモデル(田園調布の開発は渋沢秀雄)は、アメリカのセントフランシスウッドであり、イギリスの田園都市ではなかったということ。戦後日本の郊外住宅地は、民間では、アメリカのレヴィットタウンなどアメリカの影響が強かったということ。

また、アメリカのニューアーバニズムの住宅地計画思想は、住棟感覚が狭くなり、アメリカでは珍しく日本の住宅地のようなつくりかたを取り入れたこと(コミュニティーをより緊密にするため)。また、日本と異なるのは、ガレージを裏側の道(クルドサック、袋小路をつくった)に面してつくり、正面を開放的にしたこと。(正面にガレージをつくり、閉鎖的なデザインになることを避けた)住宅を南面配置とし、庇を取り入れたこと。(これらは日本の影響であった)

第6章「郊外の未来」では、すでにテレワークについて述べられている(この新書は10年前に出版された)が、三浦氏が取材したアメリカでは、ニューアーバニズムの住宅地の住人は、テレワークを実施していて、ニューヨークのような大都市には月に2、3回行くだけの状況であったらしい。

イギリスで始った田園都市の一つ、レッチワースを設計したアンウィンは、イギリスの中世の村ガージーをモデルとしたことを三浦氏から教えられた。アンウィンは、中世の村のように、いろいろな階層の人々が共に住み、いろいろな職業に就く人々が一緒に都市に暮らすことの素晴らしさを感じて、田園都市をつくろうとしたということである。

この著書は、もちろん、現在のコロナの状況は想定されていないが、ポスト・コロナの郊外のあり方、都市のあり方をどうしていくのかのヒントになる内容がつまっている。コロナの影響もあり、21世紀の都市のあるべき姿はかなり明確に見えてきたように思う。そうした方向性を行政なり民間が敏感に感じとれるのかどうか、そして実行に移せるのかどうかに今後の都市の明暗がかかっているのだろう。

*以前、このブログで、わたしの住む三鷹市は第4の山の手と書いたが、三浦氏によれば、三鷹市は、第3の山の手と第4の山の手に挟まれた地域とみなしている。近場では、吉祥寺が第3の山の手に含まれている。

by kurarc | 2021-01-27 20:18 | books(本(文庫・新書)・メディア)