画家 松本竣介 『白い建物』

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わたしは美大を卒業してはいるが、美術館が苦手である。それは、鑑賞したい絵画を見に美術館に出かけると人でいっぱいだからである。ヨーロッパでは日本ほど混雑することはないから、美術館に通うことは苦にならないが、日本ではゆっくりと絵画を鑑賞できないため、足が遠ざかってしまう。しかし、美術館ではないが、久しぶりに心惹かれる絵画に巡り合った。

それは、松本竣介という画家の『白い建物』という作品(上写真、Wikipediaより借用)で、『郊外へ』という堀江敏幸氏の小説の表紙を飾っていた。白水社の白水Uブックスは、表紙に絵画や写真等がデザインされる。その作品と関連するもの、あるいはイメージを喚起するものなどを選択してデザインされているのだと思う。堀江氏の小説の表紙になぜ松本竣介の絵画が選ばれたのか、その詳しい経緯は不明だが、きっと、松本が都市を描いたこと、それも、場末にあるような建物を数多く描いたことによるのだと思われる。

松本竣介という画家の作品を意識したことはなかったが、Wikipediaで彼の作品のリストを調べてみると、以前、いくつかの作品は美術館で鑑賞していたことに気が付いた。しかし、その時には、心を奪われることはなかったのだろう。しかし、この『白い建物』は、建築を描いているということもあるが、「白い」と題されているのに白くないことや、その形態、色彩、そして油彩のタッチなど一瞬に惹きつけられた。

絵画は、その絵画の描かれた歴史や意味などを詳しく読み解いていくことによって理解が深まる。それによって、あまり気にかけなかった絵画も徐々に惹かれていく作品になることはある。一方、その絵画を一瞬見ただけで虜になってしまうものもある。今回の松本の作品は後者のタイプである。たとえば、ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』などは一瞬にして虜になってしまう絵画であるが、また、その作品の意味についても知れば知るほど奥が深く、無限の楽しみ方のできる藝術作品と言えるものである。

松本竣介について、現在、何も知らないが、彼の絵画にはなにかわたしを惹きつける要因があるに違いないのである。まずは、どこかの美術館で実物を鑑賞して、その謎を解き明かしたい。

*『松本竣介 線と言葉』(平凡社)を図書館から借りてくると、この本のはじめに、堀江敏幸氏が表紙にこの『白い建物』を選んだ理由について述べている文が掲載されていた。堀江敏幸氏が文を掲載しているなどまったく知らなかったから、偶然の出会いと言えるものであった。

by kurarc | 2021-02-01 20:47 | art(藝術)