新たなカタストロフィーに備えて その2
本書を読んで、特に注意すべきと感じたのは、泥流の問題である。富士山の周辺地域を考えた場合、泥流が最も広範囲に被害を及ぼすことが本書で示されている。さらに、泥流が恐ろしいのは、何十年にもわたってその災害が続くということである。
雲仙・普賢岳の噴火で、火砕流や火砕サージという現象はポピュラーになったが、厄介なのはむしろ泥流なのである。泥流とは、土砂が水とともに斜面を流れる現象である。噴火では、火山灰や岩石が水と混合され、流動的になり、広大な領域に泥流をもたらすことになる。噴火が冬期であれば、雪を溶かし泥流が形成され、大雨が降っても同様な結果となる。
火砕流の到達範囲が火口から数キロメートルであるのに比べ、泥流は数十キロメートルに及ぶ。富士山周辺の富士吉田市、御殿場市、富士市、富士宮市まで泥流が到達する範囲に含まれることが本書で示されている。(特に、融雪型火山泥流が起きた場合に被害が拡大する。融雪型火山泥流とは、積雪期に積もった雪を溶かすことにより生ずる泥流である。)
およそ100年に一度の間隔で起こっていた富士山の噴火は、すでに300年以上目立った噴火が起きていないことも気がかりとなる。マグマがそれだけ大量に蓄積されていると考えられるからである。
鎌田氏も述べているが、富士山の大噴火が起こると、コンピューターで制御されているものは使用不可能になるばかりか、交通機関、都市機能は停止し、医療機関もマヒするだろうということである。ハイテクになった都市では、江戸時代の宝永の大噴火(1707年)の被害をはるかに超える災害となることは間違いない。
by kurarc | 2021-03-17 17:25