『イメージを読むー美術史入門ー』(若桑みどり著)

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夜寝る前に30分から1時間程度、読書をすることにしている。普通は専門外の本を選択することが多い。寝る前に読書をするのは、よく眠れるからであるが、それとは反対に、このまま寝るのが惜しいという心情もあるからである。


昨日、『イメージを読む』(若桑みどり著)を読了した。副題に美術史入門とある通り、著名な4人の画家の代表作を取り上げ、その作家の特徴や取り上げられた絵画の意味を解説したものである。4人の画家と作品は以下の通りである。


ミケランジェロ:システィーナ礼拝堂天井画

レオナルド:モナ・リザ

デューラー:メランコリア1

ジョルジョーネ:テンペスタ(嵐)


どの絵画の解説も興味深いものであったが、たとえば、レオナルドの「モナ・リザ」について、モナ・リザの衣服が喪服であること、モナ・リザが妊婦であること、喪服の胸飾りに無限つる草の組紐紋があることなどを初めて気づかされた。


ジョルジョーネの「テンペスタ」という絵画は初めて知ったが、ベネツィア派の早逝したこの画家には興味をもった。ジョルジョーネはレオナルドとベネツィアで会っており、レオナルドの影響を受けたであろうことが絵画から伝わってくるし、キリスト教的世界を描いておらず、当時流行していた錬金術的世界観を背景に自然現象をみずみずしく表現している。この絵画に惹かれるのは、絵画から「神」が遠ざけられていて、表現に新しさが感じられるからだと思う。


現在、中世期の文物に興味をもっているが、その場合、イコノロジー(図像解釈学)やイコノグラフィ(図像学)への知識は必須である。若桑氏の絵画を読解する仕方はこうした方法に基づいてなされていることもあり、よいトレーニングになる。


この4人の作品の読解だけをみても、藝術と位置付けられる絵画作品は、壮大な時代精神と思想、宇宙観などを包含していると共に、その時代精神、宗教を批判する内容をも表現していることがわかる。ローマを訪れた時、システィーナ礼拝堂天井画を見学した人は数多くいるだろうが、この天井画の謎を知る人がどれだけいるのだろうか。若桑氏の過激な解釈に耳を傾けてみると、この天井画がまったく別の絵画に見えてくるし、ミケランジェロは藝術家である、となぜ言われるのかが理解できるのである。


by kurarc | 2021-03-21 12:38 | books(本(文庫・新書)・メディア)