ジャック・ドゥミ監督 映画『天使の入江』再見

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映画『天使の入江』を久しぶりに見返した。ジャック・ドゥミ監督による初期長編の傑作である。このDVDの解説は、中条省平氏が書いていて、この映画をつくることになった経緯や映画を理解するためのヒントを与えてくれている。


ドゥミはこの映画をつくる頃、アニエス・ヴァルダ(映画監督)と結婚したが、ヴァルダがカンヌ映画祭のコンペティションに映画を出品したことから南仏へと向かうことになった。その時にカジノへ行き、ルーレットに熱中する人々への驚きからこの映画が発想されたという。ルーレットによって、運命が天国から地獄へ、また地獄から天国へと振幅する訳だが、その振幅の中に男女の運命を描き出した映画と言える。


改めてこの映画をみて思ったことは、カメラワークの自然さ(うまさ)であった。極端な技巧を使うわけではなく、鏡の効果を多用しながら、カメラと人物との距離感のよさ、カメラの動きが滑らかで、不自然さ、違和感が感じられない。撮影を担当したジャン・ラビエの力量かもしれない。ラビエはヴァルダの『5時から7時までのクレオ』で撮影監督として一本立ちし、シャブロル監督の『主婦マリーがしたこと』や、『シェルブールの雨傘』も担当しているとのこと。


映画音楽は、ミシェル・ルグランだが、中条氏によれば、映画のルーレットが回転する場面を映写しながらルグランに即興でメロディーを引き出させたという。この映画の冒頭のシーンは何度見ても感動するが、それは、映像だけでなく、疾走するカメラがジャンヌ・モロー(映画ではジャッキー)から遠ざかる運動と回転するような音楽が映画で描かれる運命をすでに象徴しているからだと思う。(このシーンはもしかしたら、ラストシーンの続きとも感じられる)


主にニースを舞台とした映画だが、この映画をみるといつも、37年前にニースを訪れたときの地中海の透明な海水の記憶が呼び覚まされる。そうした透明な海を背景に描かれているため、カジノという欲望の空間、場面も濁ったシーンには感じられない。爽やかな映画である。


by kurarc | 2021-04-03 23:46 | cinema(映画)