イタリア文化会館にて映画『スパイの妻』鑑賞

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昨日、イタリア文化会館にて、黒沢清監督の映画『スパイの妻』を鑑賞。上映前に、イタリアのヴェネツィア国際映画祭ディレクター、アルベルト・バルベーラ氏との黒沢監督のトークを行い、銀獅子賞受賞の経緯、黒沢映画の魅力などの議論が行われた。黒沢監督によれば、ヨーロッパの映画祭、特にベルリン、カンヌ、ヴェネツィア映画祭を比較すると、ヴェネツィア映画祭が最もくつろげる映画祭だという。ベルリンは都市部での映画祭なので、盛り上がりに欠け、カンヌは映画のアラ探しをすることが目的のような映画祭で居心地が悪るいとのこと。そうした和やかな議論の後、英語字幕の上映がはじまった。


結論から言うと、映画は非常に楽しめる作品に仕上がっていた。それは黒沢映画の特徴でもある。常に映画は楽しめるものでなくてはならないという黒沢監督の映画観は見事に達成されていた。しかし、何か物足りない感じが残った。それは何か?


一つは、映画自体の質の問題。戦争シーンの扱い方、映画の画面とアングル、その中での人の動き、アップの撮り方等にもう少しこだわりがあってもよいのでは、また、今回は映画音楽のつくり方などもう少し洗練させることができたのではないか、と正直思ってしまう。そう思うのは、黒澤明や溝口健二監督など先行する映画があまりにも優れていることもあると思うが、我々映画ファンとしては、それらを超える映画をつくってもらいたいし、観てみたい衝動があるからである。


そういう生意気な感想はあるものの、中盤以降の展開は見事で、ラストシーンはフェリーニの『道』のラストを想像させるシーンで終わっていたのは、興味深かった。バルベーラ氏との話の中で、イタリアを舞台としたホラー映画をつくりたい、といった話も出て、今後、黒沢作品によるイタリアとの合作の可能性が近い将来実現するかもしれない。


それにしても、イタリア文化会館にはいつもお世話になっている。(考えてみれば、以前このブログで取り上げたが、1981年頃に開催されたパッラーディオに関するシンポジウム以来の付き合いである。)こうした催しはすべて無料で行われ、プログラムの内容も多彩でいつも和やかな雰囲気の中で行われることも気に入っている。ラテン世界の中で、個人的には最も文化的趣向のあう国なのかもしれないといつも思う。なぜか、フランス、スペイン、ポルトガルの大使館、文化会館などではこうした催しがないのが寂しい。今後に期待したい。(日仏会館のシンポジウム等のメールマガジンは常時受け取っているが、その内容があまりに学術的過ぎて、参加したいという気にならない。)


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by kurarc | 2021-04-10 12:20 | cinema(映画)