岡田暁生著『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』を読む

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岡田暁生氏の著書を読むのは2回目となる。以前、このブログでも取り上げたが、『すごいジャズには理由がある 音楽学者とジャズ・ピアニストの対話』(フィリップ・ストレンジと共著)が最初であった。この著作に対応したYou tube映像もあり、ジャズ理論の入門として役立つ著書であった。


『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』は、いわゆる「クラシック音楽」の歴史を扱ったものだが、グレゴリオ聖歌から1950年代までの西洋クラシック音楽(前史も踏まえて)を取り上げている。同様の著書に『音楽の歴史と思想』(フーゴー・ライヒテントリット著、服部幸三訳)がある。題名の通り、こちらは、クラシック音楽史だけでなく、その背後の哲学、藝術、建築に至るまでの影響関係を取り上げている。単行本で300ページを超えるので、内容をすべて頭に入れることは難しいが、岡田氏の著書の方は、音楽史に特化したかたちでまとめられており、クラシック音楽の要点を掴むには優れた著書である。


さらに岡田氏の著書がよいのは、クラシック音楽を相対化しようとした視点で貫かれ、まとめられているところだろう。各時代の優れた曲、作曲家を認めながらも、その限界を指摘することも厭わない、そうした描き方が貫かれている。そして、本書副題「クラシックの黄昏」とあるように、1950年代にクラシック音楽は一つの終焉を迎えたとする。その後、第1に、前衛音楽はサブカルチャーへと変貌して生き残り、第2に、クラシック音楽は過去のレパートリーを再現するというやり方で生き残り、第3として、アングロサクソン系の娯楽音楽産業、つまりポピュラー音楽が19世紀の西洋音楽を引き継ぎ、ロマン派を踏襲したという認識が岡田氏の主張である。


かなり割り切ったクラシック音楽の歴史観であると思うが、大きな流れとして岡田氏の主張に間違いはないと思われる。この著書は、ごく一般的な読者を想定して書かれたというから、こうした明快な描き方をしたのかもしれない。わたしは、できれば南北アメリカのクラシック音楽も取り上げてほしかった。たとえば、ヒナステラやヴィラ=ロボスなど南米の作曲家たちは西洋音楽史の中でどのような位置付けなのかを明確にした上で結論を述べて欲しかったと思う。将来的には南北アメリカのクラシック音楽の章を付加した増補版が出版されることを期待したい。


by kurarc | 2021-05-20 20:15 | books(本(文庫・新書)・メディア)