海域と世界史 リスボンから東の世界へ

かつてリスボンに住んだ経験から、一時、リスボンを中心とした世界史に興味をもち、そこからの人の流れを頭の中に描いていたことがある。但し、それはコロンブス以後の世界だが、大きくは「スペインを追われたユダヤ人」、つまりマラーノスの流れと重ねて、歴史を把握しようとした。リスボンからイタリア、モロッコ、現在のオランダ、ベルギーへ、そして、大西洋を渡りブラジルその他へとユダヤ人たちは移動していった。


しかし、その把握の仕方は、リスボンから日本までの東の世界の膨大な歴史を無視していたことになる。かつて、ロンドンから日本までほぼ陸路(または船)で旅をしたが、その身体でつかんだ世界を自分の認識の中に再確認する作業を怠っていたのである。その中心となるのは、中近東からインド、さらに、東南アジア、中国、モンゴルといった世界であるが、現在、その認識の空白を埋めるべく、中国を中心に学習しはじめた。


平たく言えば、陸と海のシルクロード史を把握することであるが、特に、わたしは那覇にも住んだことがあるため、まずは、アラビア海、ベンガル湾、南シナ海までの海域世界の歴史を、さらに沖縄まで連続した海域史の把握を目指している。この海域世界で重要となるのは14世紀以降の中国である。特に明帝国における永楽帝の海禁政策や冊封体制などを把握する必要がある。それが、沖縄を含む大交易時代を理解するための出発点となる。


その後、今度は、沖縄から日本までの海域の理解、また、北前船他によりつながった海の日本史、世界史の把握へと向かうことになる。現在のインターネット時代前史において、世界を結ぶ最も重要な道具は船であった。ラクダはわずか一頭あたり300kg程度の荷を運搬することしかできないが、船(たとえばダウ船)によって荷は300トン運搬できるようになった。海で世界がつながったことにより、文化の進化のスピードが加速化されたことは間違いない。さらに、海域というフレームにより世界を理解しようとすることは、国民国家といったフレームのみに限定した歴史把握では捉えきれない世界史の理解が可能となる。


まずは中国を中心に措定して、世界史を頭の中で組み変えなければならないと思っている。再びこうした世界を旅するように歴史を捉え直したい、ただそれだけのことである。


by kurarc | 2021-05-27 18:17 | Asia(アジア)