『沖縄オトナの社会見学』を読む

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最近、読む本の中に沖縄に関するものを5冊のうち1冊程度は取り入れるようにしている。沖縄に住んだ経験があるにもかかわらず、あまりにも沖縄に関して無知であることに気づいたこともあるが、「海」を中心として様々な歴史や文化、民俗学、人類学、事物など読み解き、横断してみたいと思い、その中で沖縄は外すことができないためである。


その流れで『沖縄オトナの社会見学』(仲村清司、藤井誠二、普久原朝充共著)を本日読了したが、本書は沖縄(特に沖縄の都市、街)を深く知りたい人にお薦めしたい沖縄本である。沖縄の街歩きをテーマとしているが、単なる観光案内といった表層的なガイドブックではない。本書はいわゆるディープな沖縄の問題を踏まえたガイドである。3人が座談会形式で那覇、首里、普天間、コザ、金武、辺野古、糸満ほかについて軽妙にユーモアを交え語りながら、いつのまにか沖縄のディープな領域へと導いてくれる。本書は、沖縄の都市民俗学への柔らかなアプローチのようでもあり、その歴史、文化、民俗(風俗)、都市建築、ガストロノミー、自然などを取り上げ、沖縄(沖縄の街)を読み解くために必要なアイディアをも提供してくれている。


本土(ヤマト)から沖縄に旅行に行くものの多くは「レジャーとしての海」が中心となると思われるが、本書ではそうした内容は遠ざけられている。本書は沖縄という独自のトポスを意識することからはじめて開かれる沖縄のガイド、歩き方といえるものである。きっと、街歩きの好きな人には受け入れられる内容であると思うが、沖縄をレジャーの対象にしか見ていないものには無縁な本であろう。


沖縄を深く味わいたいもの、単なる観光ガイドに飽きてしまったものには本書をお薦めしたい。本書を読んでから再び沖縄を訪れれば、沖縄の見え方がまったく変わるはずである。


by kurarc | 2021-06-15 22:36 | 沖縄-Okinawa