日本の戦後建築史の見直し、読み直しへ

デペンデントハウスや郊外論などを出発点として、最近、建築史家らが描いた建築史とは異なるアプローチで戦後の建築史を読み直し、再考しようとしている。

通常、建築史家らは、アカデミックな立場で建築史を記述することが多い。たとえば、建築家が設計した建築作品を取り上げたり、建築ジャーナリズムをまとめてみたりと、一般人からは少し距離をおいた場所から建築史を記述していく。

一方で、最近それとは別に、一般に流通する雑誌の中でかなり専門的な建築史を取り上げることも行われている。それらは、アカデミックな立場ではないが、主流となる建築的傾向を拡散することが主な役割となる。流行りの建築家や建築家の作品をいち早く取りあげ、同時代性を売りとする。もちろん、その中には今後注目すべき話題が含まれている場合もあるが、いわゆる「今、現在の傾向」を提供することが最大の目的である。

今わたしが目指そうとしている建築史とは、上記のどちらでもないことは言うまでもない。わたしはどちらかというとアカデミックな立場に立つものであるが、そうした立場から見落としてしまいそうな領域を拾い上げ、建築家作品の羅列や建築ジャーナリズム、建築史家の高尚な言説による建築史とは一線を画した建築史(特に住宅および集合住宅をテーマとする)、今回は特に戦後の建築史を考えることを当面の課題としたいと思っている。

戦後建築史というと、わたしの大学院時代の師である布野修司先生の『戦後建築論ノート』という著作がある。大学院時代に論文を書くために一度精読したが、それ以来読んでいない。まずは、この著作あたりから復習して、この著作を批判的に読解することから始めなければと思っている。現在、特に1945年から1960年代までの建築史について興味をもっている。先達が何を排除して建築史(建築論)を記述してきたのか、まずはそのあたりを明らかにしなければならないと思っている。



by kurarc | 2021-06-18 15:12 | 建築活動記録