『琉球王国』(高良倉吉著)を読む

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『琉球王国』(高良倉吉著、岩波新書)を読了。沖縄は日本に併合される前、王国であった。この事実を日本(ヤマト)の人間はあまり意識したことがないのではないか。すでに、沖縄は日本である、とヤマトの人間のみならず、ウチナンチュの人間も疑問なく思っている。歴史に少しでも興味があるものなら知っていることだろうが、1879年の琉球処分において、琉球王国が沖縄県に変化したとき、中国は強く抗議した。それはなぜか?


本書は、琉球王国時代を静かに、そして冷静に語っている。その語り口は理性的であり、なるべく平易に語ろうとする努力が感じられる良書である。静かに語りながら、琉球王国(古琉球)の復権をも語っているように思える。沖縄に生まれた人間として、もちろん、王国時代を忘れるわかにはいかないし、なぜ沖縄は日本なのかについて改めて問い、その経緯を考え、自覚することは沖縄人として当然であろう。


本書は第3章までが、琉球王国時代の概要であり、琉球に固有の制度や役職名、政治組織やアジアとの交易が語られ、第4章、5章で、現在まで残った辞令書から、琉球王府の制度読み取り、王から発せられる辞令書がどのようなヒエラルキーをもつのか、また、中央から地方の行政単位へとどのように司令されたのかなどについて明らかにしている。その中で、たとえば、「ヒキ」と呼ばれる首里城警備隊は、貿易船の航海体制のアナロジーで語られるような独特の名称をもっていたことが明らかにされる。それは、ヒキ名と貿易船名の一致、さらにヒキの役職名と貿易船乗組員の役職名が一致していたという事実である。高良氏はこのことから地上組織のモデルも貿易船の航海体制からつくられたのではないか、と予測している。船が琉球王国にとっていかに重要であったのかを推測できる仮説であり、興味深い。


終章で、わたしが初めて知ったことは、琉球王国が、薩摩に侵入された後も、中国と冊封体制が維持されていたということ、つまり、王国体制は温存された状態であったということである。だから、初めに記したように、琉球王国が沖縄県に変化したとき、中国は強く抗議したということになるわけである。


高良氏は、古琉球独立論者である、と自ら認めているが、わたしもそうした立場を尊重したいと思う。沖縄は日本からみれば辺境と見えるかもしれないが、大きなアジア史の流れの中においては、日本の方がむしろ辺境なのである。そうした認識に立って、改めて琉球王国から沖縄への歴史を捉え直すことが求められると思う。


*本書では、12世紀のグスク時代から琉球王国が薩摩に侵入される1609年までを古琉球、その後、琉球処分までを近世琉球、そして、沖縄戦が終結した1945年までを近代沖縄、その後を戦後沖縄と区分している。


by kurarc | 2021-06-21 18:45 | 沖縄-Okinawa