西山夘三 『昭和の日本のすまい』

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『昭和の日本のすまい 西山夘三アーカイブスから』は、京都大学建築学科教授として特に日本のすまい研究について多くの業績を残した西山夘三による写真やスケッチをまとめたものである。


本書は昭和10年、京都帝国大学建築学科の屋上から撮影した街の俯瞰写真からはじまり、昭和51年までの写真で終わっている。それぞれ、今となっては貴重な街の風景であり、アーカイブズとして有効な資料といえる写真集である。本書を手に取ったのは、西山がどのような建築や都市を被写体として選択しているのかに興味があったからである。


戦前の町屋、長屋から同潤会アパート(西山は一時、同潤会代官山アパートの住人であった)、不良住宅地区、住宅営団の最小限実験住宅、戦後は、戦災後の街、転用住宅、復興住宅、デペンデントハウス、仮設住宅、炭鉱住宅(軍艦島を含む)、社宅、公営住宅、水上住宅、木賃住宅、文化住宅、建売住宅、ニュータウン、マンション、番屋、飯場etc.といった様々なタイプとして出現したすまいについて自ら描いたスケッチを交えて編集されている。


わたしが本書を手に取ったもう一つの目的は、西山であれば沖縄の住宅についても取り上がられているのではないか、という期待からであったが、編集上省かれたのかどうかはわからないが、沖縄については掲載されていなかった。本書が出版されたのは2007年であり、この時点で「日本の・・・」というタイトルとしているのなら、沖縄についても何らかの写真を掲載することは必須であろう。なぜ、掲載されなかったのか?


わたしは西山の他の著書も図書館から借りているが、その中にも沖縄に関する文章が見当たらない。まだわたしが巡り合っていないだけかもしれないが、これだけ日本のすまいについて研究した西山が少なくとも多くの研究を沖縄について残していないのは明らかと思われる。それはなぜなのか個人的に気になるところである。


本書の中で、特に驚いたのは、昭和20年代から30年代の水上住宅の写真である。広島や福岡にあった水上住宅の光景は、かつてインドネシアのジャカルタで見たカンポンと呼ばれるスラム街と重なり、わたしが生まれた頃にもこうした住宅が存在していたということは驚きであった。昭和と言わず20世紀はこうしたすまいを一掃し、新たな建築(すまい)、都市に造りかえられた歴史であったということは明らかである。21世紀となった今、50年も経つと都市はまったく新しい別の都市に更新されるということが本書でよく理解できる。


本書を見ていると、改めて建築(すまい)とは何か、都市とは何かについて考えざるを得ない。それは人間が存在する限り、永遠に終わることのないスクラップ・アンド・ビルドというゲームのように思えてくるが、建築に携わるものとして、ゲームとして終わらせることは避けなければならないが、それは可能なのだろうか?


by kurarc | 2021-07-03 16:44 | books(本(文庫・新書)・メディア)