ロンドンから大都会を考える

ロンドンは17世紀から18世紀にかけて消費都市に変貌していく。地価が高いため、工場は郊外へと脱出(エクソダス)し、ロンドンは熟練労働を必要としないカジュアル・ワークの都市となり、主に仕立て業と港湾労働者のような苦汁労働者が増加し、その中から落ちこぼれるものはイーストエンドのスラム(スラムも当初は”部屋”といった程度の意味であった)へと蝟集することになる。ロンドンはファッション・センターとなり、世界の輸入港、世界の銀行という金融ジェントルマンの都市へと成長していくのである。
東京が今後、どのような方向へ成長するのかわからないが、一方では、このロンドンのような金融都市へと向かうことはあきらかだろう。東京では、ロンドンにあった仕立て業のような苦渋労働(アウトワーク)すら海外へ移行してしまった現在、そこからあふれたカジュアル・ワーク、一部のホワイトカラーはデジタルワーク、また建設労働者のような苦渋労働(肉体労働)他といった労働形態に分化しているのが現状ではないか。こうした労働の分化は、およそ200年前のロンドンですでに明確になっていたこともあり、今後の東京を考える上で、ロンドンがどのように進化してきたのかを知ることは参考になりそうである。
さらに、その過程でどのように都市や建築が建設されていったのかを追跡していけば、東京のまちづくりの参考にもなるはずである。もちろん、すでに東京、ロンドン(あるいはパリも含めて)の比較は行われているが、私自身、このあたりでそれらを明確につかんでおきたいと思っている。
*参考になる、と書いているのは、そのまま利用できるという意味ではない。大都市の成立条件は国により異なるのは当たり前である。なにが根本的に異なるのかを明らかにすることが重要となるということである。

by kurarc | 2021-08-14 20:51 | books(本(文庫・新書)・メディア)