藤原正彦氏 2冊の著書

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コロナ禍において、家でこもる生活が増え、本を読む時間も増えた。このブログも、いつのまにか読書報告のような体裁を帯びてきた。専門の建築や都市に関する本を読むべきだが、そればかりでは流石に飽きてしまう。その場合、わたしは数学や音楽、民俗学などの本を挟んでストレスを発散する場合が多い。


以前から買ってあった『世にも美しい数学入門』(藤原正彦・小川洋子共著)を一気に読むことに。ちくまプリマー新書であるから、高校生程度の若い読者を対象としたものということもあり、非常に読みやすい。この本で藤原氏は、特に数学の分野では日本人は独創性がない、といった巷の意見に反論している。わたしも初めて知ったが、「フェルマー予想」がアンドリュー・ワイルズというイギリス人数学者によって証明されたが、それ以前、1970年代に「谷山ー志村予想」があり、それが解ければ「フェルマー予想」が解けるという段階にあったという。つまり、ワイルズが証明したのはこの「谷山ー志村予想」の証明であったと言っても過言ではないらしい。(日本における数学用語記述のなかで・・・予想と記述されるものは、・・・仮説と理解した方がよいようである。(『素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ著より))


また、例のゲーデルの不完全性定理の出現によって、ある命題が真偽かどうか判定できない命題があることが証明されたため、数学の難問に取りかかりながら、取り組んだ命題が偽であることもありうるということ、つまり、それがわかるまで莫大な時間を費やしてしまうということになるので、どのような問題を解決しようとするのか、その選択は数学者にとって非常に重要になるということである。


藤原正彦氏は新田次郎氏の次男であるが、その新田氏が晩年、ポルトガルの外交官であり、最期、日本の徳島で亡くなったモラエスについての著書を著すが、その取材旅行のためポルトガルを旅し、そのおよそ8ヶ月後に亡くなってしまう。藤原氏には、その父の旅の軌跡をたどる旅に出かけるエッセイがある。1997年、わたしもポルトガルへ旅立つ前にこのエッセイを読んだ。『父の旅 私の旅ーサウダーデの石』(『数学者の休憩時間』内所収)というエッセイだが、こちらはまったく数学とは関係はないが、藤原氏の人間性が知れて興味深い。数学者とは意外にも人間臭い人なのだということがよくわかる。この旅では父親がたどった旅の通りに行動し、父親が飲み、食べたものと同じものを飲み、食べるというなかで、「サウダーデ」という言葉の意味を探っていく。旅の最後には、そうした旅のなかで、藤原氏が今後進むべき道を悟ってエッセイは終わっている。


両書ともに2時間程度もあれば読める内容である。空き時間に読むには最適の分量の両著書である。


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by kurarc | 2021-08-18 22:18 | books(本(文庫・新書)・メディア)