『砂糖の世界史』(川北稔著)を読む

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『砂糖の世界史』(川北稔著)を一気に読了。


スイーツの話題は日々事欠かない。そのようなスイーツが提供できるのも砂糖があるからだが、この砂糖は、以前にもこのブログで触れたが、ステイプル(Staple)、すなわち典型的な世界商品であった。そして、砂糖をステイプルとしたのはポルトガルやイギリスによるアフリカ人奴隷を使用したプランテーションによってである。本書は、世界史Aを学ぶ高校生向けだというが、その内容は非常に高度である。ウォーラステインの近代世界システム論からシドニー・ミンツの歴史人類学を背景として論述されているからである。


イギリスに茶が普及するきっかけとなったのは、国王チャールズ2世の妻となったポルトガル出身のキャサリンがイギリスに茶と砂糖を大量に持ち込んだため、と言われている。ポルトガルの王室で茶を飲む習慣があり、それをイギリスに持ち込んだのである。それから、イギリスでは紅茶と砂糖がペアとなって王室から労働者まで幅広く広がっていくことになる。


イギリスが植民地としたカリブ海地域、たとえば、イギリス領バルバドス島では、その南海岸線すべては砂糖プランテーションで埋め尽くされ、モノカルチャーと言われる一品生産のみの経済や農業のあり方が強制された。その土地には「セントラール」と呼ばれる集中工場が建設され、奴隷たちが重労働を強いられた。煮詰められ、茶色になった原糖がイギリスのリヴァプール、ブリストル、ロンドンなどに持ち込まれ、精製され純白の砂糖がつくられたのである。


紅茶と砂糖は瞬く間にステイタス・シンボルとして普及、スノッブたちもこれに飛びついた。現在、イギリスではコーヒーも普及していると思われるが、当初、イギリスの植民地にはコーヒーを栽培できる領地がなかったこと、また、セイロンでの茶の栽培が普及したこともあり、圧倒的に紅茶が好まれることになる。


以上のような大きな流れとともに、本書はイギリスの植民地形成の過程と砂糖というステイプルの発展経緯が具体的に記述されていて、高校生レベルでも興味深く読める内容になっている。我々が日々接しているスイーツの原料の起源をたどると、こうした奴隷による重労働の歴史へとたどりつくのである。トリニダード・トバコの首相であり歴史家であったエリック・ウィリアムズは、「砂糖あるところに、奴隷あり」と言った。スイーツを食べるのもよいが、一方でこうした歴史を頭の片隅にとどめておきたい。


*アジア、アフリカに多くの植民地を持たなかったプロイセン(プロイセンの学者、A.S.マルクグラーフによる研究、及びK.F.アッハルトの研究による)は、砂糖にかわるものとして、ビートの根に着目し、ビート(砂糖大根)からビート糖を製造する研究を行い、18世紀後半、熱帯でしかできなかった砂糖を温帯で生産することに成功した。日本で甜菜糖と言われるものがそれである。フランス人もこうした甜菜糖を好んで使用すると聞く。


by kurarc | 2021-08-24 20:35 | books(本(文庫・新書)・メディア)