素数ゼミ

素数ゼミ_b0074416_19184391.jpg


「素数」という数学用語をいつ学んだだろうか?多分、中学の数学の時間ではなかったか。1より大きい整数で、1とその数自身以外に約数をもたない数が素数と定義される。それより小さな数の積では表せない数とも定義される。素数とは代数の原子と言われる所以であ。一見、素人にとってなんのことはないこの素数は、現代数学の数論においていまだに解明されていない謎を含む数であるという。2、3、5、7、11、13、17・・・が素数だが、これらはある法則性がありそうだが、無限大に巨大な素数を考え続けると、次にいつ素数が現れるのか予測が不可能なのだ。


こうした数学の問題は脇に置いておいて、もう少し身近なところで、素数が脚光をあびた分野がある。夏もすでに終わりかけ、セミの鳴き声もかなり減少してきたが、北米には「素数ゼミ(周期ゼミ)」と名付けれれた13年と17年周期で羽化し、地上に現れ、繁殖行動を行うセミがいるというのである。


このセミの謎にとりくんだ日本人の数理生物学者が吉村仁博士である。昆虫好きの人であれば、テレビでもかなり取り上げられたようなので、知っている方も多いに違いない。わたしは『素数の音楽』(マーカス・デュ・ソートイ著)という著書で知った。吉村博士はその謎をいくつかの要因から説明している。


一つは、およそ180万年前の氷河期の生き残り戦略としての理由である。氷河期、レフュージア(避難所、退避地と訳される)といわれる氷河の影響を大きく受けなかった場所で品種の限られたセミが生き残ったという考え。さらに、生き残るためには、なるべくセミが交雑することをさけ、生まれた場所で生活することを守ったという考え。交雑することによって、地中に暮らす周期がバラバラになると、生まれてきても交尾する相手が少ない場合がでてきてしまうということ。そして、最後に、この13年、17年という素数に関連すること。すなわち、こうした素数年の周期で生まれ出てくることにより、素数ではないセミと出会う周期が全く変化するということ。


たとえば、6年と8年周期のセミであれば、24年、48年、72年、96年・・・と頻繁に周期がかちあってしまうが、5年、7年という素数周期であれば、35年、70年、105年・・・しかかち合うことはなくなるということになる。数に素数が入っていると、最小公倍数は大きく変わるのである。


つまり、北米の素数ゼミはこうした素数の性質を利用して羽化のタイミングを決めるよう進化したということである。こうした素数ゼミは羽化した年には100メートル四方に40万匹、10平方メートルに400匹程度の数になるというから驚きである。


by kurarc | 2021-09-04 19:22 | nature(自然)