エリック・ロメール 映画『クレールの膝』 バラとサクランボ

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エリック・ロメールの映画を初めて見たのは35歳くらいのときであった。某大学の助手に就任する前、某設計事務所でアルバイトをしていたが、その所員の方にシネフィルの方がいてロメールの映画について教えてくれたのがきっかけであった。『緑の光線』という映画だったが、それから、ロメールの映画を注目するようになった。


しかし、ロメールの初期の映画「六つの教訓話」シリーズはなかなか公開されず、レンタルでもVHSしかなく、ずっと見逃していた。昨年、ロメール生誕百周年だったこともあり、この「六つの教訓話」シリーズが名画座といわれるような映画館での上映が続いている。今日は、地元近く、下高井戸の下高井戸シネマで上映がはじまったこともあり、まずは『クレールの膝』(短編の『ある現代の女子学生』も)をみる。


結婚を前にした中年男性が若い女性に心を動かされる、その会話、対話の妙を楽しむことができる映画である。いつもロメールの映画をみて思うことは、到底こうしたシナリオを考えつくことは不可能だということである。男と女の付き合い方がまったく日本人の感性とは異なるフランスだから可能なのか、あるいはロメールだから可能なのかわからないが、一見大した出来事でもない日常の会話のなかに、非凡な表現が散りばめられたロメールの世界をこの映画でも堪能することができた。


この映画でロメールのプロデューサーを務めたバーベット・シュローダー氏が興味深いエピソードをパンフレットに寄せている。この映画を撮影する1年前にシーンを撮影する場所にバラを植えておいたというのである。そのバラは見事に咲き誇り、映画のワンシーンに登場する。また、サクランボを摘み取るシーンが登場するが、それもその季節に合わせて撮影が決定されたという。こうした配慮がロメールの映画に輝きと瑞々しさを与えているのだと思う。


by kurarc | 2021-09-11 21:24 | cinema(映画)