カエターノ・ヴェローゾの新刊

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一般社団法人日本ブラジル中央協会のHPで、この協会が発行する『ブラジル特報』(pdf)を渉猟していると、「カエターノ・ヴェローゾの魅力」(No.1658号 2020年9月号)という特集があることに気がついた。彼が昔出版した『Verdade tropical』(『熱帯の真実』と日本語に訳されている)が昨年、国安真奈さんの邦訳で出版されたという。わたしはまだ手に取っていないし、どのような内容なのかわからないが、「歌う哲学者」カエターノの著書だけに、その内容は自伝のようであり、回顧録的小説のようでもあるようだ。

カエターノ・ヴェローゾのコンサートを初めて体験したのは、リスボンに滞在していた1998年であった。下宿先のオーナーの一人、イリナさんからリスボン万博でカエターノのコンサートがあるから行ってみないか、と誘われたのがきっかけであった。コンサートは3年ほどまえにリリースされたアルバム『粋な男』(フィーナ・エスタンパ)をひっさげた凱旋コンサートであった。このコンサートはわたしが体験したライブで5本の指に入るようなすばらしいもので、そのせいで、この『粋な男』のCDは今でもよく聴く。中南米(スペイン語圏)の名曲を集めたカエターノにとっての懐メロ的CDで、選曲、アレンジがすばらしい。

このところ、カエターノの音楽から遠ざかっていたが、この新刊も読みたいし、また彼の音楽を聴きたくなってきた。彼は、もともと大学で西洋哲学を学んだという。ブラジルの地元紙に映画批評を書くことから出発したが、ブラジル軍事政権により拘禁され、2年半のロンドンでの亡命生活を経験している。その彼が、いつのまにかギターを手に取り、シンガー・ソングライターとして活動をはじめることになる。歌手になろうとしてなった訳ではなかったのだ。

新しく出版された『熱帯の真実』は、カルメン・ミランダ論をニューヨークタイムズに寄稿したことがアメリカの出版社の目に留まり、執筆のオファーがあった、という経緯だという。英訳版が先行販売されたが、その英訳に納得ができず、初版から20年経過した2017年にポルトガル語版を出版したという。国安さんの邦訳はこのポルトガル語版からの翻訳であると思われる。

カエターノのようなミュージシャンが現在の音楽状況をどのように俯瞰しているのか気になる。『熱帯の真実』は現在の内容ではないが、彼の音楽哲学を知る上で、必読だろう。

*上記内容は、『ブラジル特報』No.1658号 2020年9月号を参照して書いています。

by kurarc | 2021-10-21 22:34 | Brazil(ブラジル)