ミケランジェロとカララの大理石

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小田原で江戸城に使われた石材を見学してきたが、以前から鉱物については一度、丁寧に学習したいと思っていた。実務(建築)ではなかなか石材を使用することは稀だが、石材を学ぶことは地学を学ぶことになり、地学を学ぶことは、地球の成り立ちを学ぶことであり、果ては宇宙を学ぶこと(天文学)につながっていく。


以前から鉱物に関する本を少しずつ収集してきた。その中に『鉱物 人と文化をめぐる物語』(堀秀道著、ちくま学芸文庫)というエッセイ集があるが、この本は興味深い内容にあふれている。このエッセイ集の中に、ミケランジェロに関するものがある。


ミケランジェロは、カララ(ピサの北30kmあたりにある)の大理石をこよなく愛したのだという。この古代ローマ皇帝アウグストゥス時代に発見されたという大理石には大きな特色があった。カララの大理石の化学成分をみると、炭酸43.696%、カルシウム55.380%、マグネシウム0.589%、他の不純物は0.0%以下で、鉄は0.005%であり、通常、大理石は方解石の微粒からなる岩石で方解石の結晶より不純物が多いのだが、カララの大理石は純度が極めて高い。つまり、大理石では最上級品であるのだ。ミケランジェロはこうした大理石を自ら採石し、運搬した採石者でもあったという。また、産地を自ら開拓したとも伝えられている。


特に白大理石は彫刻材として貴重であった。古代ローマでは喜びや幸福と白い石とは不可分であった歴史があり、純白であることは現代科学からみても、結晶構造は安定し、電流は通さず、光を吸収しない特性があることがわかっている。白い大理石は気高さ、清らかさの象徴でもある。堅牢であるにもかかわらず、やわらかく、ねばりづよく、加工にも適している。これほど完璧な材料はないのである。


こうしたカララの大理石も、一つ弱点があるという。それは、多湿と炭酸ガスに弱いということである。東京のような大気中に亜硫酸ガスや窒素化合物の多い土地では屋外に使用することは適切ではない。堀氏はここで、竜安寺の石庭を例に、この石庭で使われている石はチャート(石英や珪岩)であり、これらの石は非常に安定した物質であり、大気汚染でもびくともしないものであると告げている。つまり、現代の日本のような土地には適した選択になったということのようである。


by kurarc | 2021-12-06 19:58 | architects(建築家たち)