『沖縄からアジアが見える』(比嘉政夫著)を読む

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岩波ジュニア新書は、中学、高校生の世代にむけた新書と思われるが、本書『沖縄からアジアが見える』は、その内容の深さ、広さは、わたしのような大人が読んでも十分すぎるほど豊かで、名著と言えるものであった。さらに、日本語が平易、かつ明解で、これほど読みやすい学術書はわたしのなかでは初めてかもしれない。もちろん、学生にむけた書物であるという配慮からかもしれないが、著者、比嘉政夫氏の力量によるものだと思われる。


最近、沖縄(琉球)に関する書物の出版が相次いでいるが、その中で本書はすでに20年以上前に出版されたものであるが、社会人類学(比較民俗学)的内容を平易に興味深く網羅している点、沖縄学の入門書といった内容であり、沖縄の言語からはじまり、中国、東南アジアとの関連と比較、門中制度、音楽(音階)、船漕ぎ行事の比較、染織(布)、をなり神について・・・etc.など、本書から出発し、様々なテーマで沖縄とアジア諸国との関連について学ぶための出発点になるような内容となっている。


驚いたのは、最終章の「をなり神」に言及する章で、わたしの大学時代の文化人類学の先生であった鍵谷明子先生の著書『インドネシアの魔女』を紹介する内容が語られていたことである。大学の授業でそうした話をされていたのだろうが、恥ずかしながらまったく記憶にない。今度、大学時代のノートで確認してみたいと思っている。


本書の最後で、沖縄と朝鮮半島との交流について取り上げている。まだ、朝鮮半島との関連の研究ははじまったばかりとのことだが、両地域に共通して存在する大綱引きの行事など、今後の調査課題であるという。また、沖縄の門中集団と韓国の門中集団との比較や儒教倫理の受容との関連など、多くの研究課題があるとして本書を締めくくっている。


by kurarc | 2021-12-16 22:15 | 沖縄-Okinawa