ジョアン・ジルベルトのギター

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中学時代の幼馴染から家で眠っていたというギターをもらった。エレアコというクラシックギターにピックアップが付属したタイプである。ギターは3年近く弾いていなかったが、3日間くらいギターをいじっていると、指の感覚が蘇ってきた。

3年前、ちょうどジョアン・ジルベルトのギター完全コピー符(鳩山薫監修)があり、その中の何曲かを練習していたのだが、再度練習し始めた。最近、ボサ・ノヴァは日本では今ひとつ流行ってはいないが、それは多分ジョアンのギターテクニックに興味をもつ人が少ないからではないか。

テレビでギターを弾く日本人ミュージシャンを見ていると、ギターの演奏法はほぼストロークであり、指できちっと弾くタイプのミュージシャンに出くわすことは珍しい。さらにテンションコードを弾きこなすようなミュージシャンはまずテレビではお目にかかれない。

鳩山薫監修による『ジョアン・ジルベルト ボサ・ノヴァギター完全コピー』で、たとえば、「ワン・ノート・サンバ」のコード進行を見ただけでも、ジョアンがメロディーにつけるコード進行、和声の独創性がよく理解できる。「ミ」の単音で進行するメロディーから「ラ」の単音へと移行するメロディーにつけるコード進行とリズムの感覚は、普通の人がイメージするボサ・ノヴァとの感覚を大きく逸脱していると思うが、それがまさにジョアンのボサ・ノヴァなのである。さらに、ジョアンは、こうした複雑なギターワークを行いながら歌も歌うのだから、神業としか言いようがない。

最近の日本のミュージシャンでは、男性より女性の方が繊細なギターを弾きながら歌うミュージシャンが多い気がする。日本でジョアンのギターテクニックを引き継ぐのは女性になるのかもしれない。

*鳩山氏は、ガロートにより完成されていたカッティング(バチーダ)と、メロディ、リズムの同時性から解放された演奏方法(別人が演奏しているかのように聴こえる演奏)というインディペンデンスをジョアンの特徴としてあげている。さらに、語るように歌うノン・ビブラート唱法とのコンビネーションによって、ポルトガル語の響きを強調するような音楽を完成したと思われる。



by kurarc | 2022-03-25 23:51 | music(音楽)