中銀カプセルタワービル解体

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新橋へ行ったついでに、中銀カプセルタワービルへ立ち寄った。4月12日から解体がはじまったとの情報を得たためである。

小雨のなか、この建築を仰ぎ見たが、わたしのなかにはチマチマしたカプセルの集合といったイメージがあったが、久しぶりに見学すると、全体のスケール感は思った以上に巨大で、カプセル自体のスケール感もよく、改めて建築性が明快に表現されたビル(建築家の明快なコンセプトが表現されているといった意味)であることを痛感した。

このメタボリズムを代表する建築について、歴史工学の中谷礼仁氏は著書『セヴェラルネス 事物連鎖と人間』のなかで、メタボリズムの思想の破綻について言及している。詳しくは著書によっていただきたいが、都市の成長に対応するように建築システムも流動すべきといったメタボリズムの思想はこの建築においても決して実現することなく(カプセルが更新されるようなことは一度もなかった)、竣工から50年が過ぎ、とうとう今年、解体を迎えることになったのである。

そうした思想の破綻を象徴するようなこのビルも、思いがけない保存の道が切り開かれたことは驚くべきことであった。カプセルの集合としてつくられたビルであったことから、建築全体ではなく、個々のカプセルを単体で保存するという道が開かれたのである。すでに国内だけでなく海外からも、この建築のカプセル部分のみを保存したいという申し入れが多数届いているという。こうした事態は、設計者である黒川紀章氏も想像できなかったのではないだろうか。

さらに、黒川氏の著書『ホモ・モーベンス』、これは彼によれば「動民」と表現されるが、コロナ禍で仕事を固定されたオフィスだけでなく、様々な場所でこなしていくという労働形態が発生してきたが、黒川氏は著書のなかで、都市が工業都市から情報都市へと変化する中で現代のような労働形態や都市の変化が起こるという多くの部分を予見していたのである。彼の著書『ホモ・モーベンス』(初版は1969年)は、21世紀の感性で読み直され、再評価される著書となるかもしれない。

この建築の解体は、以上のような状況からカプセルを傷つけないように丁寧に解体していかなければならないが、それがどのように行われていくのか興味深い。何度か解体中の現場に足を運んで、その様子を見学していきたいと思う。


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by kurarc | 2022-04-15 21:51 | conservation design