昆虫の食草・食樹



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ケヤキとエノキの木を間違えてから、植物の葉のかたちが特に気になり始めた。道端の木の葉をちぎっては葉の形状を観察することが日常となりつつある。花をむしり取るのは気がひけるが、葉を1、2枚取ることは気がひけるまではいかないから都合が良い。

わたしの住む近辺はケヤキが多く、エノキはなかなか見かけないと思い、それからエノキはないか探していたが、近くの神社の境内にあることを発見して驚いた。いつも自転車で通りかかる道端にエノキはあったのである。エノキに執着しているのは、この木がオオムラサキという国蝶の食草(食樹)だからである。(そして、この蝶はわたしの高校の校章でもあったからである。)

わたしの住む三鷹市にもかつてはオオムラサキが生息していたようだが、いまでは出会うことはできない。東京であれば、高尾山あたりまでいかないと観察できないようである。わたしはこうした生息地が遠く周辺へ追いやられたのは自然の破壊が原因と考えていたが、食草や食樹という木の機能を知ってから、どうもそれだけではないような気がしてきた。

甲州街道に形式的に街路樹としてケヤキが植えられているように、都市のなかの街路樹や植栽の選定方法に、昆虫や野鳥の餌となるような植物や樹木(つまり食草、食樹)を取り入れようという発想自体が貧しかったことが、オオムラサキのような蝶の生息を不可能にしていった面もあるのではないか、そう思うようになってきたのである。

もちろん、近年にはそうした発想のもとでビオトープを都市のなかにつくろうという動きは芽生えてきている。『昆虫の食草・食樹ハンドブック』(森上信夫、林将之著)には、昆虫82種と食草、食樹68種が掲載されているが、以外と餌になる樹木、植物の種類が少ないことに驚かされる。また、子供の頃、よくカブトムシやクワガタを採りに雑木林(子供の頃は、ドングリ林と呼んでいた)に出かけたが、この本によれば、クヌギやコナラから出る樹液は、暑さで発酵するらしく、それをめがけてカブトムシやクワガタが集まってくるという。この本ではこうした樹木を樹液酒場と形容していて、昆虫たちは人間が酒場に群がるように樹木に群がっているのだと想像でき、昆虫たちに対する親しみがさらに増した。

食草、食樹という考えに気づかせてくれたのは、2年ほど前、沖縄で知り合いの建築家の方の幼稚園の仕事を見学させていただいたときである。幼稚園の生垣にオオゴマダラ(下写真)という蝶の食草であるホウライカガミを植えた、と説明していただき、感心したことがきっかけであった。沖縄は今年、本土復帰50周年を迎えたが、こうした地道な仕事が新たな沖縄を形づくっていくことになると思う。政治は大事だが、こうした小さな取り組みに目を向けることが沖縄にとって最も大切なことではないだろうか。

*オオゴマダラは、マダラチョウの仲間の最大のもの。ホウライカガミという有毒植物を食べることにより、体内に毒を蓄積し、鳥らの捕食を避けると言われている。有毒武装した蝶ということになる。



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by kurarc | 2022-05-19 14:53 | nature(自然)