アフロ・フューチャリズムと建築

フランス国立日本研究所から配信されたZOOMによる講座、『建築資材-社会技術的な装置から政治問題まで』(第1回)を聴講した。この研究所からのメールマガジンを配信してもらっているが、こうしたイベントの紹介が頻繁にあるものの、その内容があまりにも高度で抽象的なテーマが多いため、なかなか参加できないでいた。今回は、建築に関わる内容であったことから参加をした。

アルメール・ショプラン氏(女性)からは、西アフリカの建築状況が、フレデリック・エポー氏からはフランスにおける木材の問題、特に現在進行するパリのノートルダム復元(特に屋根の木材架構)における木材使用の問題点等に関する報告があった。

ショプラン氏は西アフリカの都市ベルトと言われる地域で進む建築について、特にコンクリート(特にセメント使用について)使用に関する現況についての話題があがった。アフリカの大都市部ではセメントを使用した住宅をつくることが流行していて、女性でも自らの手で住宅を建設するという。アフリカでは木造は安物、昔の建築というイメージがあること、また、住宅が強制的にに撤去される可能性もあることから頑強なコンクリートブロックをセメントで固め積み上げて住宅をつくることなどがステイタスになっているらしい。セメントは以前、輸入されるものであったが、現在はアフリカで生産されるようになり、その消費量が競われているような状況であるという。Aliko Dangoteといったセメント会社を20も所有するような大金持ちが現れ、セメントの価格も安く、セメント消費に拍車がかかっているのだそうだ。

西アフリカにおいてセメントは小麦や米、砂糖などと同様の商品であり、さらに、欧米諸国から最後の建築上(およびコンクリートの)のフロンティアとみなされ、多くの資本が集まっている状況のようだ。そして、都市のイメージは中国や中東の大都市のような高層ビル群の集合体のようで、まさに、アフロ・フューチャリズムと呼ばれるにふさわしいイメージの都市建設が進んでいるという。

こうした状況のなかで、今年度プリツカー賞を受賞した建築家フランシス・ケレの意義は大きいのではとショプラン氏は述べていた。単にコンクリートの頑丈な建築だけがよいのではなく、土やワラ、レンガなど土着的な素材を使用して建築をつくることの可能性をケレが教えてくれていること、また、アフリカの一般庶民がバナキュラーな建築の価値を忘れかけているからである。ケレの建築の影響はこれから広まるだろうということであった。

エポー氏については長くなるので省略するが、フランスでは木材はここ150年かけて国内資源としては十分に整ったが、古来の技術の伝承については20世紀中頃から衰退してきているようで、わたしも初めて知ったが、シャルトル大聖堂の修繕時期であった1841年には木材資源の枯渇から、木材部を鉄骨に代替して修復していった過去があるとのことである。(ランス大聖堂ではコンクリートを使用)50年生程度の曲がった木材をノミで角材にして建材としていくようなローテックな技術が若年層にも関心を呼んできている状況であるという。

世界のCO2排出量の8%がコンクリートの使用によるとのことで、今後、建築の建設にコンクリートの使用を極力減らしていくような対策が求められていくことになりそうである。この講座はこうした建設資材が実は技術だけでなく、文化、社会、政治と密接に関わるということをテーマとし、今後あと3回にわたり行われる予定であるという。

by kurarc | 2022-05-20 23:28 | architects(建築家たち)