元倉眞琴先生の集合住宅


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今日、仕事で千駄ヶ谷に行ったとき、新宿御苑の通り沿いに端正な集合住宅(写真)があることに気がついた。新宿御苑に隣接して建つその集合住宅の足元に設計者である元倉眞琴先生の紹介看板があり、元倉先生の設計であることがわかった。

元倉先生に初めてお会いしたのはもう40年以上前になる。わたしが大学生だった頃、アルバイトでお世話になった建築家の方と元倉先生、及び家具デザイナーの方が代官山ヒルサイドテラスの一室を共有して借りていて、そこで初めてお目にかかった。わたしは元倉先生のもとで働いていた訳ではなかったので、その時あまり話した記憶はないが、静かに仕事をする方だったという記憶がある。

その後、たまにお目にかかることはあったが、わたしがT大学の助手をしたとき、ちょうど元倉先生が大学院の非常勤講師として赴任されてきて、多くの時間接する機会を持つことになった。それでも、元倉先生は大袈裟に建築論を語るような方ではなかった。むしろ、言葉より仕事を見てくれというタイプで、大学院講師を赴任中、日本建築学会作品賞を受賞された時も、受賞できてよかったと一言いう程度であった。

わたしが印象に残っているのは、助手の仕事の後、ポルトガルに遊学したが、帰国後共著として出版に参加した『ポルトガルを知るための50章』(現在は55章)という本を謹呈したとき、年賀状にその本の出版を喜んでくれた一言が添えてあったことである。

偶然に出くわした新宿御苑の集合住宅は、排気口のベントキャップ廻りのデザイン(写真下)まで神経が行き届いていて、緻密にデザインされていることが外観からわかった。マッシブなボリュームとガラスのボリュームが対比的に扱われていて、新宿御苑への多面的な開放性をテーマとした集合住宅であることがわかる。元倉先生の建築は、デザインしてはいるが、奇をてらったようなところが見当たらない。デザインに時間をかけ、納得のいくまで細部を詰めるデザインを心がけた建築家だったのだと思う。

残念ながら5年ほど前、71歳の若さでお亡くなりになったことが惜しまれる。

マッシブなボリュームのコーナー部分にアールを付けているは、新宿御苑に対して柔らかな表情となるようにという配慮からとのこと。


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by kurarc | 2022-08-19 23:37 | architects(建築家たち)