エリザベス女王の道行き

エリザベス女王の道行き_b0074416_20304868.jpg


エリザベス女王が国葬会場ウェストミンスター寺院へ向かう道行きがどのような場所、空間であるのか気になった。

テレビでザ・マル(The Mall、上写真)という街路が登場したが、このあたりはかつてロンドンを旅した時には訪れていなかった。「マル」とはイギリス発音で、アメリカ発音での「モール」である。この周辺が整備されたのは20世紀初頭のようで、ヴィクトリア女王からエドワード朝へと移行する頃、大英帝国の威信を象徴するために整備されたもののようである。

この整備を担った建築家はサー・アストン・ウェッブだという。あまり聞きなれない建築家である。以前、このブログ(2021/08/28のブログ)で紹介した『ロンドン縦断』(長谷川堯著)で、長谷川氏はこの建築家のつくる建築は鈍重であるとしてあまり評価はしていない。ザ・マルは、バッキンガム宮殿とトラファルガー・スクエアーを結ぶとともに、さらに東へ伸びるチャリング・クロスとストランド、金融都市シティ、最後にセント・ポール大聖堂を結びつける街路でもあり、トラファルガー・スクエアーを中心とすると、その西の終端部と位置付けられる。(以上、長谷川氏の著書より)

ザ・マルに匹敵するような街路は、東京に存在するだろうか。表参道くらいしかわたしには思い当たらない。エリザベス女王の国葬で、ロンドンは国家的祝祭、儀礼をするための空間を、国家の威信を保つために整備していたということを改めて見せつけられたように思う。一流の国民国家として、このような場所、空間を持つことは当然のことなのだろう。東京はザ・マルのようなバロック的空間を整備しそこなったと言えるのではないか。(しかし、それが悪いことであるとは思わないが)

by kurarc | 2022-09-15 20:33 | architects(建築家たち)