白澤宏規先生の北山・住宅

ブログをはじめて1年が過ぎた。

先日届いたTOTO 通信の春号に、大学時代お世話になった白澤宏規先生の自邸が掲載されていた。コンクリートブロック造に鉄骨造の寄棟屋根をのせた住宅が1974年から2002年まで、4回の増改築を重ねて住み続けられている様子が取り上げられている。

私が学生のころ、たまにゼミの授業を「対の舎」といわれる先生の事務所(アトリエ)で受けたことを思い出す。現在はお嬢さんが使われているようだ。
4回に増改築された住宅をみると、約30年という月日が過ぎ、その生活の変化とともに素直に増改築されていった様が伺える。そして、私の記憶の中にあった分棟型住宅は姿を変え、一つの住宅に変化し、穏やかさとやさしさが感じられる住空間に変化しているように思う。住宅をこのように流動的に変化させながら使い続けていくということは、住宅だけでなく現在興味のある建築の保存、都市の持続を考える上で示唆に富む。

白澤先生の住宅の特異性についても改めて考えさせられる。そのことを知りたければ、宮脇壇さんの著作『人間のための住宅のディテール』の中に掲載されている「銀舎」のディテールをみるとよくわかる。建具の収まりなど、豊かになり過ぎた昨今、このような収まり(興味のある方は上記書籍参照下さい)を考える人はいないだろう。工業化された部材をいかに住宅に取り込んでいくのかというテーマがミニマムな住宅の中でさりげなく表現されているのだ。この住宅を学生時代見学させていただいたが、白澤先生の住宅に対するコンセプトを理解することはその当時できなかった。実務経験を経て、理解できるようになったのはその15年先くらいであった。

by kurarc | 2007-04-09 18:47 | architects