二つの講演会 建築家今井兼次とアントニン&ノエミ・レーモンド

昨日今日と二つの講演会に参加し、あわただしい週末を過ごした。

ひとつは多摩美術大学美術館で行われている『建築家 今井兼次の世界Ⅱ』内で開催された建築家の佐々木宏氏による「近代建築受容における今井兼次の功績」と題された講演会。まず、展示されている今井兼次氏の図面、模型もすばらしく、また今井氏が1920年代にロシアからヨーロッパへ地下鉄駅の視察に行ったとき、当時の著名な建築家に会い、撮影した建築家の肖像の数々に目が奪われた。佐々木氏が講演会の中でふれていたのは、今井氏の視察旅行はいわゆるVIP待遇であったそうで、あのコルビュジェも今井氏と会う前に、彼の作品をあらかじめまとめて丁寧に今井に説明してくれたそうだ。この説明を聞いて、はじめて今井氏の建築家の肖像写真がなぜ可能であったのか理解できた。佐々木氏からはその他建築家の様々なエピソードを伺い、建築家たちの生身の姿を浮き彫りにする講演会であった。

また二つ目は、神奈川県立近代美術館で行われているアントニン&ノエニ・レーモンド展に関連した講演会で、鎌倉商工会議所地下ホールで行われたもの。興味深いエピソードのひとつは、レーモンドがリーダーズダイジェストビルで学会賞をとったとき、建築家岸田日出刀がレーモンドに向かって、戦前はどのような建築をつくっていたのかと訪ねたというもの。レーモンドは日本においては、戦前アカデミズムの世界ではそれほど注目をされていなかったという。また、軽井沢の夏のアトリエに行って仕事ができたのは、ごく限られた所員だけであったということ。毎年6月の終わりに軽井沢に行ける所員が発表され、7月、8月の二ヶ月間を軽井沢で過ごしたそうだ。レーモンドが力を入れた仕事の基本設計は軽井沢で行い、帰ってから実施設計を行ったということ・・・etc.

建築家にはエピソードがつきものだが、二つの講演会ではいくら話しても話しきれないといった感じであった。エピソードに富んだ建築家ほど優秀な建築家であり得るということなのだろうか?

by kurarc | 2007-09-16 22:05 | architects