バウハウス・デッサウ展鑑賞

先日のブログで紹介した、産経新聞社企画によるバウハウス・デッサウ展ブロガー特別鑑賞会に参加してきた。

バウハウスはもちろん大学生のころから知っていた。色彩の学習には特に有名だったヨハネス・イッテンの色彩論などを使って勉強していた。しかし、バウハウスの運動の全貌をつかめるような書籍は学生時代になかった。1990年代に中央公論美術出版からバウハウス叢書が出版されたことで、かなりの理論的側面が明らかになった。しかし、この叢書をすみからすみまで読むような人は少ないだろう。今回のような展覧会は、作品や模型によって生のバウハウスを体験できるまたとない機会であった。

まず、この展覧会を観るまでバウハウスについて誤解していたことがある。バウハウスとは工業化を第一にすえた造形運動であると思っていた。しかし、それはある側面だけで、手工芸と技術の工業化を通しての造形運動であり空間表出の運動であったと言うこと。照明器具や家具などのプロダクトを観ると、薄っぺらな工業製品にはどうみても思えなかった。その点、たとえば、リートフェルトの家具は、バウハウス展の中では異質に思えた。カトリック陸軍ホームの椅子では、面材と線材をボルトで留めているだけの椅子である。この感性は、明らかに手工芸とは一線を画している。ある意味でドライな興味深い感性ではあるが、ものの存在のあり方の還元主義に通ずるともとれるし、形式主義に陥る危険のあるきわどい感性であると言えるだろう。(反対に、そこがリートフェルトの最大の魅力でもある。)

今回の展覧会で、確認できたことのひとつは、マルセル・ブロイヤーの造形力である。以前から興味をもっていた彼の建築であるが、BAMBOS(バンボス)と言われる住宅のプロジェクトは現代の住宅といってもよい明晰さをもっていたし、彼の家具も魅力的であった。ブロイヤーの造形力の魅力は、貧しい素材を使っていたとしても、その造形が貧しくならずに、豊かに生まれ変わるその力量にある。また、ハンネス・マイヤー、ハンス・ヴィットヴァーによる学校の計画案(ペーターシューレ)はドローイングでは知っていたが、今回、模型で観ることができ感激した。彼らの造形力も並みではない。ワイヤーで吊られた人工地盤は少女達の遊び場として計画されているとは知らなかった。なんと過激な建築であろうか。

最後に、再度この鑑賞会を企画された産経新聞社に感謝したい。このような試みを今後も続けていただき、何の収入になるわけでもない文章を書き続けているブロガーを励ましてほしい。たくさんのお土産もいただき、ありがとうございました。
(写真上:BAMBOS(バンボス 准マイスターのための住宅)、写真下:ペーターシューレ)
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by kurarc | 2008-06-26 00:02 | archi-works