吉田鉄郎のシンポジウムに参加して

昨日(6月30日)、日本建築学会において吉田鉄郎に関するシンポジウムがあり、聴講させていただいた。
富山テレビが制作した「平凡なるもの〜建築家 吉田鉄郎物語〜」をシンポの冒頭で観る。改めて吉田の誠実な人柄とその建築の誠実さが見事に対応しており、感動する。吉田は実作だけでなく、ドイツ語による著作においても優れた業績を残したことも興味深い。本当の意味でインターナショナルな仕事をなし得た数少ない近代における建築家のひとりであったのだ。テレビ番組の中で、吉田の原稿がドイツで発見されたということも感慨深い。彼の原稿を大切に保管していたヴァスムート社にも敬意を表したい。

私は以前、ブルーノ・タウトに関する論文を書いたのだが、吉田はやはりタウトに接したことが大きかったと思っている。タウトも吉田のような誠実さと嘘がつけない性格であったということは、タウトの日記を読むと良く理解できる。日本人の建築家に対する容赦ない批判(レーモンドに対しても)から、当時の建築家たちは多くを学んだはずである。たとえば、吉田がどのようなことを思いながらタウト設計による旧日向別邸を補助していったのかなどがわかれば、もう少し、タウトと吉田の影響関係が理解できるのだろう。(吉田もタウトを批評する眼差しをもっていたに違いない。)

テレビ番組は非常に優れたものであったが、我々建築家はこの番組で吉田を理解してはいけない。吉田が残したすべてのものに目を通し、学ぶことから吉田鉄郎を理解しなくてはならないと思う。

by kurarc | 2008-07-01 12:09 | architects