2017年 09月 13日 ( 1 )

EUは崩壊に向かっていくのか?

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最近のヨーロッパの出来事の中で、最も論議を呼んだことといえば、テロの話題とイギリス人が国民投票の末、EU離脱の道(Brexit ブレグジット)を選択したことだった。特に、Brexitについては、日本の知識人たちの大半は、EU残留を予想していたのではないか。そのため、ニュースなどでは予想できなかったという意見が大半を占めたと思う。

一方、こうしたイギリスの選択を予想していたヨーロッパの知識人たちもいた。その一人、日本で翻訳が数多く出回るようになったエマニュエル・トッド氏である。彼の著書を積極的に日本に紹介しようとしている堀茂樹氏などの知識人もいることから、気軽にトッド氏の考えを知ることができるようになった。

『問題は英国ではない。EUなのだ 21世紀の新・国家論』(文春新書)の1章、2章でBrexit、およびグローバリゼーション・ファティーグ(グローバリゼーション疲労、トッド氏の造語)についてトッド氏は述べている。結論から言うと、トッド氏はイギリスが新たな国民国家の道を歩む選択をしたことを評価していること、EUは崩壊に向かい、21世紀型の新たな国民国家像を他のヨーロッパ諸国も模索していくとになること、そもそもイギリスが脱退したのは、ドイツによって支配されるEUからの脱退であったこと・・・etc.について述べている。EU脱退が即、保守反動の道と考えることは非常に皮相なイギリス(あるいはヨーロッパ)に対する見方である、ということである。

トッド氏はイギリスのケンブリッジで研究した経緯のあるフランス人であることから、かなりイギリス贔屓であることは承知しておかなければならないが、例えば、ドイツの移民政策の寛容さは、日本のように少子化に歯止めのきかないドイツが、様々な民族や近隣諸国から若者や熟練労働者を取り込んで経済を維持し、EU内でのヘゲモニーを維持しようとするしたたかな戦略なのである。今後、注視しなければならないのは、こうしたドイツのEUにおける立ち位置と他のEU加盟国がどのような方向に舵を切るのかということ、イギリスのEU離脱までの動向、それを冷静に見つめるロシアの動向だろう。さらに、ドイツから見放されつつあるアメリカの動向か。

トッド氏は、「工業化以前の伝統的な家族構造によって、近代以降の各社会のイデオロギーの選択が説明できる」ことを彼の若い頃の著作で立証したという。こうした彼の家族システム論のような著作にも興味があるが、わたしが最も関心を持つのは、21世紀は、国家が一つの世界国家のような形態に移行していくのではなく、新たな国民国家の再定義へと向かいそうだ、ということである。まずは、2040年くらいまでに国家像が世界の中でどのように推移していくのか、今後目が離せそうもない。

*トッド氏は、あのポール・二ザンのお孫さんであるという。

*グローバリゼーション・ファティーグ(グローバリゼーション疲労)については、また別の著作を読んでから書きたい。


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by kurarc | 2017-09-13 16:50 | books

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