2019年 01月 10日 ( 1 )

ビル・エヴァンス B Minor Walts (For Ellaine)

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映画でも音楽でも、思い出したように観たくなる映画、聴きたくなる音楽がある、ビル・エヴァンスのピアノもそのうちの一つだろう。

以前一度このブログに書いたが、エヴァンスの死後発売されたという『You Must Believe In Spring』というアルバムもそうした音楽が数多く含まれている。今回は、特に1曲目に収録されている ”B Minor Walts (For Ellaine)”が無性に聴きたくなった。

"Ellaine"というエヴァンスの恋人が自殺した(と伝えられる)後に、彼女に捧げるためにつくった曲と言われている。このワルツをエヴァンスはゆっくりとしたテンポで、しかも、正確にリズムを刻むのではなく、自分の気持ちに忠実に揺れ動きながらピアノを弾いている。

「冬」を感じさせる透明なメロディー、和音、転調を繰り返す曲調は、死んでいった"Ellaine"の想い出がフラッシュバックしている様を表現しているかのようである。音を最小限に絞りこみ、まったく無駄な音のない見事なアドリブは、ラジオから流れてくる雑音でしかない音楽とは大きく異なる。

"Ellaine"は決して聴くことができなかった曲ではあるが、エヴァンスは"Ellaine"へのレクイエムであると同時に、自分の魂の動揺をこの曲によって鎮めようとしたのだろうか。カーネギーホールでの演奏よりも、こちらのゆったりとした弾き方がわたしは好ましいように思う。この一曲を聴くだけでも購入する価値のあるCDである。


by kurarc | 2019-01-10 15:53 | music