2020年 02月 15日 ( 1 )

21世紀の複製技術

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21世紀になり、ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』は大きく書き換えなければならない時代に入った。この週末にアルゴリズミック・アーキテクチュアやソーシャル・ファブリケーションに関する書物を渉猟した。そのどちらにも関わる訳者、著者は、田中浩也氏である。

田中の著書『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』(講談現代新書)は、刺激的な書物である。(まだ半分しか読み終えていない)このタイトルにある”SF”とは、サイエンス・フィクションの略ではなく、ソーシャル・ファブリケーションの略である。3Dプリンターが近年、かなり普及してきたが、この技術の根源とパースペクティブについてまとめた著書である。

まず、驚いたのは、3Dプリンターというと、なにか3次元の商品をつくるためのプリンターと短絡的に思ってしまうが、開発者の一人、コーネル大学のホッド・リプソンは、「自らコピーをつくりだすロボット」の探求者であったということである。彼は、ロボットを通じて「生物」の条件について考え、「自己複製・自己増殖するロボットの仕組み」をつくること、生物の根源を考えていた研究者であったということが重要である。

このことだけを知っただけでも、3Dプリンターが単なる道具の枠を超え、人間の根源を照射する技術として位置づけられていることがわかる。興味深いことに、最新の3Dプリンターの中には、その仕様書のなかに、まず初めにやってほしいこととして、プリンターの部品を製造することが書かれているという。つまり、3Dプリンターは、自らの部品をつくり(自己複製)、そのメンテナンスに役立てられること(オープンソース・ハードウェアという考え方)が想定され、つくられているのである。

田中の著書は、新書であるが、その内容の振幅は巨大であり、まったく新たな地平にむかう技術のありようを考察し、推察している。データのデジタル化により、もはや、ものの運搬は必要なくなる。海外にいる相手とデータを交換し、その国にある3Dプリンターで出力することで、商品が生み出されていく。ベンヤミンはこうした状況を今日生きていたならどのように分析しただろうか?

*逆に、3Dプリンターでつくることができないものとはなにか、そちらもおさえておく必要を感じる。

by kurarc | 2020-02-15 21:31 | books(書物・本)